33 / 85
第2章 騎士と少年
2ー16 ロマンですか?
しおりを挟む
2ー16 ロマンですか?
「ロマン?」
俺は、吐き出すように言った。
「そんなもの、夢幻にすぎん」
俺は、俺のために涙を流しながらも本当は、俺を裏切って義兄とできていた元婚約者のロウランのことを思い出していた。
俺が魔法の槍で貫かれているのを見て笑っていたロウラン。
「変わらない愛なんてこの世界にはない。あるのは、打算と欲にまみれた汚れた感情だけだ」
「そんなこと、ない!」
チヒロが俺に力説した。
「真実の愛だってこの世界には、あるよ!」
俺は、チヒロの言葉を鼻で笑った。
そんな俺を見てチヒロは、ため息をついた。
「いつか、誰かがロイドにもほんとの愛がなんなのか教えてくれるときがくればいい。そうすればきっと」
チヒロは、言葉を切った。
頬がうっすらと染まっている。
「ロイドは、救われる」
はい?
俺は、冷ややかにチヒロを見やった。
俺が救われる?
「俺が救われるときは」
俺は、きっぱりと告げた。
「呪いが解かれて、そして、俺をこんな姿にした裏切り者たちに俺が受けたのと同じ苦しみを与えられたときだ」
俺は、ふいっとそっぽを向く。
チヒロが小声で囁く。
「ロイドがその苦しみから解放されるときが来るのを僕は、祈っているよ」
しばらく馬車の中には息苦しいような沈黙が流れた。
俺は、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
流れていく街角の光景は、嘘臭いぐらいに平和で穏やかだ。
チヒロは、口を閉じたまま反対側の窓の外を見ていた。
馬車は、走り続け、やがて少し賑やかなところから離れた閑静な住宅地に到着した。
大きな屋敷がいくつか立ち並んだ町並みを俺たちは、見つめていた。
少し行ったところでひときわ大きな屋敷が見えたと思ったらそこで馬車が歩を緩めた。
マイヒナが俺に告げた。
「ここが会頭にすごしていただく屋敷になります」
はい?
俺は、驚いて二度見してしまた。
その屋敷は、二階建ての立派なレンガ造りのお屋敷だった。
屋根もちゃんと瓦でふかれているし、窓には、本物のガラスが嵌め込まれている。
馬車は、門をくぐってその屋敷の前へと進んでいった。
俺は、マイヒナに告げた。
「こんな立派なお屋敷じゃなくてもいいんだが」
「いえ、あなたは、我々の商会の会頭なんですからね」
マイヒナは、笑顔で応じた。
「それにふさわしい屋敷に住んでいただかなくては」
屋敷の前には何人もの使用人らしき人々が並んで俺たちが来るのを待っていた。
「使用人までいるのか?」
「当然です」
マイヒナが譲れないという様子で告げた。
「あなたには、それだけの価値があるのですから」
馬車が停車して俺たちが降りていくと使用人たちの中から二人の男女が進み出た。
「ご無事で到着されてようございました、旦那様」
若い男性の執事らしい男が俺に礼をとる。
もう一人の年配の女性が微笑んだ。
「お待ちしておりました、お嬢様もさぞかしお疲れでしょう。お部屋にご案内いたします」
お嬢様、と呼ばれてチヒロが気色ばむ。
しかし、見た目は、女の子にしか見えないしな。
「ロマン?」
俺は、吐き出すように言った。
「そんなもの、夢幻にすぎん」
俺は、俺のために涙を流しながらも本当は、俺を裏切って義兄とできていた元婚約者のロウランのことを思い出していた。
俺が魔法の槍で貫かれているのを見て笑っていたロウラン。
「変わらない愛なんてこの世界にはない。あるのは、打算と欲にまみれた汚れた感情だけだ」
「そんなこと、ない!」
チヒロが俺に力説した。
「真実の愛だってこの世界には、あるよ!」
俺は、チヒロの言葉を鼻で笑った。
そんな俺を見てチヒロは、ため息をついた。
「いつか、誰かがロイドにもほんとの愛がなんなのか教えてくれるときがくればいい。そうすればきっと」
チヒロは、言葉を切った。
頬がうっすらと染まっている。
「ロイドは、救われる」
はい?
俺は、冷ややかにチヒロを見やった。
俺が救われる?
「俺が救われるときは」
俺は、きっぱりと告げた。
「呪いが解かれて、そして、俺をこんな姿にした裏切り者たちに俺が受けたのと同じ苦しみを与えられたときだ」
俺は、ふいっとそっぽを向く。
チヒロが小声で囁く。
「ロイドがその苦しみから解放されるときが来るのを僕は、祈っているよ」
しばらく馬車の中には息苦しいような沈黙が流れた。
俺は、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
流れていく街角の光景は、嘘臭いぐらいに平和で穏やかだ。
チヒロは、口を閉じたまま反対側の窓の外を見ていた。
馬車は、走り続け、やがて少し賑やかなところから離れた閑静な住宅地に到着した。
大きな屋敷がいくつか立ち並んだ町並みを俺たちは、見つめていた。
少し行ったところでひときわ大きな屋敷が見えたと思ったらそこで馬車が歩を緩めた。
マイヒナが俺に告げた。
「ここが会頭にすごしていただく屋敷になります」
はい?
俺は、驚いて二度見してしまた。
その屋敷は、二階建ての立派なレンガ造りのお屋敷だった。
屋根もちゃんと瓦でふかれているし、窓には、本物のガラスが嵌め込まれている。
馬車は、門をくぐってその屋敷の前へと進んでいった。
俺は、マイヒナに告げた。
「こんな立派なお屋敷じゃなくてもいいんだが」
「いえ、あなたは、我々の商会の会頭なんですからね」
マイヒナは、笑顔で応じた。
「それにふさわしい屋敷に住んでいただかなくては」
屋敷の前には何人もの使用人らしき人々が並んで俺たちが来るのを待っていた。
「使用人までいるのか?」
「当然です」
マイヒナが譲れないという様子で告げた。
「あなたには、それだけの価値があるのですから」
馬車が停車して俺たちが降りていくと使用人たちの中から二人の男女が進み出た。
「ご無事で到着されてようございました、旦那様」
若い男性の執事らしい男が俺に礼をとる。
もう一人の年配の女性が微笑んだ。
「お待ちしておりました、お嬢様もさぞかしお疲れでしょう。お部屋にご案内いたします」
お嬢様、と呼ばれてチヒロが気色ばむ。
しかし、見た目は、女の子にしか見えないしな。
10
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる