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第2章 騎士と少年

2ー16 ロマンですか?

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 2ー16 ロマンですか?

 「ロマン?」
 俺は、吐き出すように言った。
 「そんなもの、夢幻にすぎん」
 俺は、俺のために涙を流しながらも本当は、俺を裏切って義兄とできていた元婚約者のロウランのことを思い出していた。
 俺が魔法の槍で貫かれているのを見て笑っていたロウラン。
 「変わらない愛なんてこの世界にはない。あるのは、打算と欲にまみれた汚れた感情だけだ」
 「そんなこと、ない!」
 チヒロが俺に力説した。
 「真実の愛だってこの世界には、あるよ!」
 俺は、チヒロの言葉を鼻で笑った。
 そんな俺を見てチヒロは、ため息をついた。
 「いつか、誰かがロイドにもほんとの愛がなんなのか教えてくれるときがくればいい。そうすればきっと」
 チヒロは、言葉を切った。
 頬がうっすらと染まっている。
 「ロイドは、救われる」
 はい?
 俺は、冷ややかにチヒロを見やった。
 俺が救われる?
 「俺が救われるときは」
 俺は、きっぱりと告げた。
 「呪いが解かれて、そして、俺をこんな姿にした裏切り者たちに俺が受けたのと同じ苦しみを与えられたときだ」
 俺は、ふいっとそっぽを向く。
 チヒロが小声で囁く。
 「ロイドがその苦しみから解放されるときが来るのを僕は、祈っているよ」
 しばらく馬車の中には息苦しいような沈黙が流れた。
 俺は、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
 流れていく街角の光景は、嘘臭いぐらいに平和で穏やかだ。
 チヒロは、口を閉じたまま反対側の窓の外を見ていた。
 馬車は、走り続け、やがて少し賑やかなところから離れた閑静な住宅地に到着した。
 大きな屋敷がいくつか立ち並んだ町並みを俺たちは、見つめていた。
 少し行ったところでひときわ大きな屋敷が見えたと思ったらそこで馬車が歩を緩めた。
 マイヒナが俺に告げた。
 「ここが会頭にすごしていただく屋敷になります」
 はい?
 俺は、驚いて二度見してしまた。
 その屋敷は、二階建ての立派なレンガ造りのお屋敷だった。
 屋根もちゃんと瓦でふかれているし、窓には、本物のガラスが嵌め込まれている。
 馬車は、門をくぐってその屋敷の前へと進んでいった。
 俺は、マイヒナに告げた。
 「こんな立派なお屋敷じゃなくてもいいんだが」
 「いえ、あなたは、我々の商会の会頭なんですからね」
 マイヒナは、笑顔で応じた。
 「それにふさわしい屋敷に住んでいただかなくては」
 屋敷の前には何人もの使用人らしき人々が並んで俺たちが来るのを待っていた。
 「使用人までいるのか?」
 「当然です」
 マイヒナが譲れないという様子で告げた。
 「あなたには、それだけの価値があるのですから」
 馬車が停車して俺たちが降りていくと使用人たちの中から二人の男女が進み出た。
 「ご無事で到着されてようございました、旦那様」
 若い男性の執事らしい男が俺に礼をとる。
 もう一人の年配の女性が微笑んだ。
 「お待ちしておりました、お嬢様もさぞかしお疲れでしょう。お部屋にご案内いたします」
 お嬢様、と呼ばれてチヒロが気色ばむ。
 しかし、見た目は、女の子にしか見えないしな。
 
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