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第2章 騎士と少年
2ー6 旅立ち
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2ー6 旅立ち
こうして二年後。
俺たちが神都ライヒバーンを目指して旅立つときがきた。
もちろんウルマグライン魔法学園に入学することが目的なのだが、このときには俺は、すでに20歳になっていた。
いくら主であるチヒロのためとはいえ今さらほんとに学生になるのか。
俺の心は葛藤していた。
しかし、アルアロイの考えは変わらなかった。
なんでもこの世界でチヒロが安全に学べる場所は、神都ライヒバーンのウルマグライン魔法学園しかないんだとか。
まあ、実の父親に奴隷に売られたぐらいだからな。
無事なのが見つかればただではすまないのかもしれない。
出発前に俺は、馬車の前でチヒロとリータが来るのを待っていた。
俺が留守の間は、アントワープさんたちに『ヒポクラティス』商会のことはまかせることになっていた。
毎月一度、俺のもとに報告が届くことになっている。
俺は、待っている間にアントワープさんと細々とした話をしていた。
しばらくしてリータにつれられてチヒロがあらわれたとき、俺は、あんぐりと開いた口がふさがらなかった。
チヒロは、なんと少女の姿をしていた。
背中まで伸びた銀の髪をおさげにして黒を貴重としたメイド服を着せられたチヒロは、羞恥に頬を染めていた。
「さあ、出発しましょうか、ロイド様」
リータが俺に声をかけた。
俺は、こくこくと頷いたが視線は、チヒロから離さない。
「あの、リータ」
俺は、リータに訊ねた。
「チヒロは、この姿で行くのか?」
「ええ、そうですよ」
なんてこともないという様子で答えるリータに俺は、一瞬、やっぱりチヒロは、女の子だったのかと納得しかけた。
が!
そんなわけがないし!
「なんで女装?」
俺の問いにリータがめんどくさそうに告げた。
「チヒロの正体を隠すためだよ」
マジですか?
チヒロは、これから俺が学園を卒業するまでの数年間、女の子として過ごすことになったらしい。
俺は、ちらっとチヒロを見た。
チヒロは、心なしか頬を染めて恥ずかしげな様子だが、それがまた可憐な少女のように見えていた。
リータのやっていることは、ほぼアルアロイの意思だ。
それは、俺なんかが覆すことができることではない。
俺たちは、馬車に乗り込むと地上を目指して出発した。
地上までの道のりは、ほんとなら数ヵ月は、かかる筈だが、俺がいるからほんの一瞬ですんだ。
俺は、反重力魔法で馬車を地上に向かって落下させた。
俺たちは、ぐんぐんと丸く開いた空へと落ちていった。
チヒロが怯えた様子で俺にしがみつく。
チヒロの能力は、アルアロイによって封印されていた。
チヒロの首には、黒い首輪がはめられていて、それがチヒロの力を封じていた。
これは、俺が考えた魔道具だ。
チヒロの体内の気の流れを首もとで断ち切ることによってマジックキャンセラーとしての力が封じられる。
そうしたら俺の体がもたないのではないか?
そこのところは大丈夫。
俺は、チヒロの気が直接俺の中に流れ込むようにチヒロの断たれた気と俺の気を繋いだのだ。
こうすることでチヒロの力を断ちつつ俺の竜化の魔法をおさえることもできる。
俺とチヒロの左手の薬指にはチヒロと俺との回路を繋ぐための指輪がはめられている。
これも俺の考えた魔道具だ。
こうして二年後。
俺たちが神都ライヒバーンを目指して旅立つときがきた。
もちろんウルマグライン魔法学園に入学することが目的なのだが、このときには俺は、すでに20歳になっていた。
いくら主であるチヒロのためとはいえ今さらほんとに学生になるのか。
俺の心は葛藤していた。
しかし、アルアロイの考えは変わらなかった。
なんでもこの世界でチヒロが安全に学べる場所は、神都ライヒバーンのウルマグライン魔法学園しかないんだとか。
まあ、実の父親に奴隷に売られたぐらいだからな。
無事なのが見つかればただではすまないのかもしれない。
出発前に俺は、馬車の前でチヒロとリータが来るのを待っていた。
俺が留守の間は、アントワープさんたちに『ヒポクラティス』商会のことはまかせることになっていた。
毎月一度、俺のもとに報告が届くことになっている。
俺は、待っている間にアントワープさんと細々とした話をしていた。
しばらくしてリータにつれられてチヒロがあらわれたとき、俺は、あんぐりと開いた口がふさがらなかった。
チヒロは、なんと少女の姿をしていた。
背中まで伸びた銀の髪をおさげにして黒を貴重としたメイド服を着せられたチヒロは、羞恥に頬を染めていた。
「さあ、出発しましょうか、ロイド様」
リータが俺に声をかけた。
俺は、こくこくと頷いたが視線は、チヒロから離さない。
「あの、リータ」
俺は、リータに訊ねた。
「チヒロは、この姿で行くのか?」
「ええ、そうですよ」
なんてこともないという様子で答えるリータに俺は、一瞬、やっぱりチヒロは、女の子だったのかと納得しかけた。
が!
そんなわけがないし!
「なんで女装?」
俺の問いにリータがめんどくさそうに告げた。
「チヒロの正体を隠すためだよ」
マジですか?
チヒロは、これから俺が学園を卒業するまでの数年間、女の子として過ごすことになったらしい。
俺は、ちらっとチヒロを見た。
チヒロは、心なしか頬を染めて恥ずかしげな様子だが、それがまた可憐な少女のように見えていた。
リータのやっていることは、ほぼアルアロイの意思だ。
それは、俺なんかが覆すことができることではない。
俺たちは、馬車に乗り込むと地上を目指して出発した。
地上までの道のりは、ほんとなら数ヵ月は、かかる筈だが、俺がいるからほんの一瞬ですんだ。
俺は、反重力魔法で馬車を地上に向かって落下させた。
俺たちは、ぐんぐんと丸く開いた空へと落ちていった。
チヒロが怯えた様子で俺にしがみつく。
チヒロの能力は、アルアロイによって封印されていた。
チヒロの首には、黒い首輪がはめられていて、それがチヒロの力を封じていた。
これは、俺が考えた魔道具だ。
チヒロの体内の気の流れを首もとで断ち切ることによってマジックキャンセラーとしての力が封じられる。
そうしたら俺の体がもたないのではないか?
そこのところは大丈夫。
俺は、チヒロの気が直接俺の中に流れ込むようにチヒロの断たれた気と俺の気を繋いだのだ。
こうすることでチヒロの力を断ちつつ俺の竜化の魔法をおさえることもできる。
俺とチヒロの左手の薬指にはチヒロと俺との回路を繋ぐための指輪がはめられている。
これも俺の考えた魔道具だ。
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