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第2章 騎士と少年

2ー4 決意

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 2ー4 決意

 夕食時、チヒロと俺の間には微妙な空気が流れていた。
  俺は、なんとかチヒロに話しかけようとしたが駄目だった。
 俺が話そうとするたびにチヒロが目を伏せるのだ。
 なんだかチヒロの顔が赤い?
 俺は、大きなテーブル越しにチヒロの額へと手を触れた。
 「熱はないようだな」
 「ひゃいっ!」
 チヒロがびくんと体を膠着させる。
 俺は、さらにチヒロの体調をチャックしていく。
 顔色やら脈拍に問題はない。
 チヒロは、硬直してされるがままになっていた。
 俺は、つぅっとチヒロの頬を指先で撫でてから、その青銀色の長い髪に触れた。
 艶やかで柔らかい。
 俺は、はっと気づいた。
 チヒロは、頬を真っ赤に染めてふるふると震えている。
 しまった!
 俺は、夢中になっていてチヒロの気持ちまで配慮していなかった。
 もしかしたら。
 俺に触れられてイヤだったのかもしれない。
 俺は、ぱっと手をひいた。
 「すまない!」
 チヒロは、伏せ目がちに小さく頭を振る。
 「かまわない」
 俺がホッとして椅子に腰かけるとラミーとミリーが料理の皿を運んできた。
 それは、暖かい豆のスープだった。
 俺は、テーブルに置かれていたスプーンで一口スープを飲んだ。
 うん。
 今まで食べたものの中では断トツにうまい。
 チヒロを見ると夢中でスープを食っていた。
  無理もない。
 今までクルスのとこでの食事がひどかったからな。
 俺の視線に気づいたチヒロは、顔をあげて俺を見た。
 「何?」
 俺を青い瞳でじっと睨み付けているチヒロを見て俺は、初めてチヒロの瞳が美しい空の色をしていることに気づいた。
 今まで目元まで伸びた髪のせいで目はほとんど見えなかった。
 見えても俺は、気づかないふりをしていたのかもしれない。
 だって、今までのチヒロは、ほんとに薄汚れて小汚ない見た目のせいで小ネズミみたいだったからな。
 まさか、こんなにきれいな子供だったとは。
 ミリーとラミーに全身を洗われ、長く伸び放題だった髪を切り揃えられたチヒロは、まさに王族の血を持つ王子様だった。
 服も小綺麗なものになっている。
  もう、薄汚れた小ネズミなんかじゃなかった。
 「いや、なんでも、ない」
 俺は、ぷいっと目をそらした。
 チヒロがムッとしているのがわかった。
 「なんでもなくは、ないだろ!なんだよ、さっきから」
 俺は、言葉がでなかった。
 なんと言ったらいいというのか。
 こんなにも美しい王子様の騎士になったのだ。
 俺は、心に決めていた。
 俺は、チヒロの騎士だ。
 これから何があろうとも最後の最後までチヒロを守り抜く。
 
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