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第1章 奈落へ

1ー17 宣誓

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 1ー17 宣誓

 「どうするね?ロイド・ライゼンバーグ」
 アルアロイは、金色に輝く瞳を細めた。
 卑怯だ。
 俺は、ため息を漏らした。
 俺は、逃亡兵だ。
 もし捕まれば裁判抜きで殺されそうだし。
 俺の脳裏に義兄ともと婚約者の薄笑いが浮かんできた。
 ちくしょう!
 俺は、拳を握りしめる。
 俺には、抗えることなんてできやしないのか!
 
 俺は、40階層の端の崖からダイブした。
 今度は、逆に。
 反重力魔法で俺の体は、上空へと向かって落ちていく。
 俺は、37階層へと戻るとクルスの隠れ家へと帰った。
 もう、夕方だ。
 急がなくては。
 俺は、家路を急いだ。
 俺が戻るとチヒロが待っていた。
 チヒロは、俺を見るとホッとした表情を浮かべた。
 「心配かけたな、チヒロ」
 俺は、チヒロに微笑んだ。
 「このお守り、ありがとうな。おかげで助かった」
 「そうか」
 チヒロは、ぷぃっと横を向いた。
 「なら、よかった」
 俺がチヒロの頭をポンと軽く叩いて微笑むとチヒロは、顔を真っ赤に染めて俯いた。
 「子供扱いするな!」
 不機嫌なチヒロに俺は、苦笑した。
 ほんとに可愛くないなぁ。
 俺は、チヒロに訊ねた。
 「クルスは?」
 チヒロは、ムッとした様子で奥へとかけていく。
 しばらくして顔を出したクルスに俺は、アルアロイとの話をした。
 クルスは、吹き出した。
 「お前が学生、か?こりゃまた、えらくとうのたった学生だな」
 「うるせぇ!俺だって好きで学校に入るわけじゃねぇんだよ!」
 俺は、ひとしきり笑い転げているクルスを冷ややかな目で見つめていた。
 しばらくしてクルスは、涙を拭きながら俺にきいた。
 「で?チヒロの専属騎士になるわけか?」
 「そうだ」
 クルスは、黙って頷くとチヒロを呼んだ。
 奥の扉からこちらを覗くチヒロは、まだご機嫌斜めの様子だった。
 クルスは、チヒロに事情を説明した。
 チヒロは、俺が専属騎士になるときくと頬をうっすらと赤らめた。
 「俺じゃ、不満かもしれんが仕方ない。諦めてくれ」
 俺は、チヒロに告げた。
 チヒロは、黙って俺を見上げていた。
 「いまさら」
 チヒロは、ぼそっと呟くが、かまわず俺は、チヒロの前に跪くと真剣な表情でチヒロを見つめた。
 「チヒロ・ラミナタス・オム・シュタウト殿下」
 俺は、チヒロに囁くように宣誓した。
 「私、ロイド・ライゼンバーグは、どんなときにもあなたの盾となり、剣となることを誓う」
 「・・・許す」
 チヒロは、震える声で俺に告げた。
 「お前を僕の騎士と認めよう」
 ほんとならここでチヒロから剣を賜る筈なんだがそこは省くことにする。
 こうして俺たちは、主従契約を結んだ。
 
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