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第1章 奈落へ
1ー14 騎士
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1ー14 騎士
その家は、まるで鰻の寝床のようだった。
奥へ奥へと続いていく暗い廊下を女は迷うことなく進んでいく。
俺は、きょときょとと周囲を見回しながら女の後をついていった。
女は、突き当たりの黒い扉を軽くノックすると低い声で何かを囁いた。
異国の言葉だ。
すぐに中から返事があった。
「お入り」
女が初めて俺を振り向き頷く。
俺は、扉へと手を伸ばした。
ぎぃっと軋む音がしてゆっくりと扉が開いた。
部屋の中は、じんわりと暑かった。
いくら春とはいえちょっと暑すぎる。
俺は、着ていたシャツのボタンをはずして首もとをくつろがせた。
「よく来たね、ロイド・ライゼンバーグ」
部屋の中央にいたのは巨大な蛇だった。
教会の尖塔まで届くかというぐらいでかい蛇がトグロを巻いている。
俺は、ごくりと唾を飲んだ。
蛇は、シュウシュウと音をたててその目蓋のない金色の目で俺を見据えると俺に話しかけてきた。
「時間がないのだろう?リータ」
「はい、旦那様」
女が蛇のそばに椅子を置いた。
俺は、女に促されてその椅子に腰かけた。
「どうだね?奈落の住み心地は」
蛇が俺に訊ねたので俺は、答えた。
「まあまあってとこだな」
「そうか、それはよかった」
蛇がシュウシュウと音をたてた。
うん?
俺は、蛇の様子を伺った。
こいつ、笑っているのか?
長い赤い舌が俺が椅子の横に置いた剣へと延びる。
「これは・・あの子の匂いがする」
「それは、チヒロにもらったお守りだ」
俺は、蛇の方へとお守りを差し出した。
「どうりで」
蛇が納得したというように言った。
「君が無事にここにつけたわけだ。このリータは、悪食でね。君のような若者を見ると手を出さずにいられないんだが、君は、リータにつまみ食いされた様子がない」
「つまみ食い?」
「ああ」
蛇が目を細める。
「リータは、淫魔と吸血鬼の合の子でね。君のような若者を見つけるととってもいい夢を見せてくれる代わりに体をじっくりと文字通り味わうのさ」
あ、ぶねぇ!
俺は、はっと息を吐いた。
もしかしてチヒロのお守りがなければ俺は、この女に生きたまま喰われてたのか?
俺は、ちらっと女を見た。
リータは、ぞくぞくするような妖艶な笑みを浮かべるとペロリと舌舐めづりした。
俺、マジでやばかったんだな。
俺の背中を冷たいものが走った。
蛇は、話を続けた。
「ここに君を招待したのは、君にお願いしたいことがあるからなんだが」
「お願い?」
俺がいぶかしげにきくと、蛇は、またシュウシュウと音をたてた。
「なんということはない。チヒロのことなんだが、君にあの子の専属騎士になってもらいたいんだよ」
その家は、まるで鰻の寝床のようだった。
奥へ奥へと続いていく暗い廊下を女は迷うことなく進んでいく。
俺は、きょときょとと周囲を見回しながら女の後をついていった。
女は、突き当たりの黒い扉を軽くノックすると低い声で何かを囁いた。
異国の言葉だ。
すぐに中から返事があった。
「お入り」
女が初めて俺を振り向き頷く。
俺は、扉へと手を伸ばした。
ぎぃっと軋む音がしてゆっくりと扉が開いた。
部屋の中は、じんわりと暑かった。
いくら春とはいえちょっと暑すぎる。
俺は、着ていたシャツのボタンをはずして首もとをくつろがせた。
「よく来たね、ロイド・ライゼンバーグ」
部屋の中央にいたのは巨大な蛇だった。
教会の尖塔まで届くかというぐらいでかい蛇がトグロを巻いている。
俺は、ごくりと唾を飲んだ。
蛇は、シュウシュウと音をたててその目蓋のない金色の目で俺を見据えると俺に話しかけてきた。
「時間がないのだろう?リータ」
「はい、旦那様」
女が蛇のそばに椅子を置いた。
俺は、女に促されてその椅子に腰かけた。
「どうだね?奈落の住み心地は」
蛇が俺に訊ねたので俺は、答えた。
「まあまあってとこだな」
「そうか、それはよかった」
蛇がシュウシュウと音をたてた。
うん?
俺は、蛇の様子を伺った。
こいつ、笑っているのか?
長い赤い舌が俺が椅子の横に置いた剣へと延びる。
「これは・・あの子の匂いがする」
「それは、チヒロにもらったお守りだ」
俺は、蛇の方へとお守りを差し出した。
「どうりで」
蛇が納得したというように言った。
「君が無事にここにつけたわけだ。このリータは、悪食でね。君のような若者を見ると手を出さずにいられないんだが、君は、リータにつまみ食いされた様子がない」
「つまみ食い?」
「ああ」
蛇が目を細める。
「リータは、淫魔と吸血鬼の合の子でね。君のような若者を見つけるととってもいい夢を見せてくれる代わりに体をじっくりと文字通り味わうのさ」
あ、ぶねぇ!
俺は、はっと息を吐いた。
もしかしてチヒロのお守りがなければ俺は、この女に生きたまま喰われてたのか?
俺は、ちらっと女を見た。
リータは、ぞくぞくするような妖艶な笑みを浮かべるとペロリと舌舐めづりした。
俺、マジでやばかったんだな。
俺の背中を冷たいものが走った。
蛇は、話を続けた。
「ここに君を招待したのは、君にお願いしたいことがあるからなんだが」
「お願い?」
俺がいぶかしげにきくと、蛇は、またシュウシュウと音をたてた。
「なんということはない。チヒロのことなんだが、君にあの子の専属騎士になってもらいたいんだよ」
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