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第1章 奈落へ
1ー13 街
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1ー13 街
「うるせぇ!」
俺は、なんとか言葉を押し出した。
女は、くすくすと笑った。
そして、俺の目を覗き込んだ。
深淵を見るとき、深淵もまた、こちらを見る。
誰の言葉だったか。
俺の脳裏にふと、その言葉が浮かんだ。
「あんた、この世の者じゃないね」
女が言った。
「転生者かぇ?」
俺の心臓が跳ね上がる。
なんで、こいつ、それを知っているんだ?
「あんたは、あたしがなんでそれを知っているのかと思ってるね」
女が低い笑い声をたてた。
俺は、女の赤い瞳から目が離せなかった。
女は、流れるような黒い髪を日本髪のように頭上に結い上げている。
美しい女だ。
だが。
化け物。
「あたしのことを恐れてるね」
女が笑いを含んだ声で告げた。
「あんたは、怒りに満ちすぎている。そして、恐れにも。ほんとに」
女が赤い唇を舌先で舐める。
「おいしそう」
おいしそう?
女は、俺にぐっと顔を近づけると俺の頬を舐めた。
「抗いがたいものに飲み込まれかけている。闇に堕ちかけた魂。あたしの好みだねぇ」
俺は、全身に冷たい汗が流れるのを感じていた。
喰われる!
俺は、龍人になってから初めて恐怖していた。
だが。
女は、ふっと真顔に戻るとつぃっと俺から離れた。
「ふん。そのお守り、憎らしい。よくきくお守りだこと。まったく気にいらないねぇ」
女は、俺に背を向けると歩き出した。
「ついてきな。この先にある街にあんたを待ってるお人がいる」
ふっと体が動いた。
俺は、女の後に続いて歩き出した。
女は、無言で歩き続ける。
俺は、必死にその後を追って歩いた。
しばらく歩くと広い場所に出た。
そこからは、大きな街が見下ろせた。
「あそこがこの40階層で一番大きな街、トセナンの街さ。あそこにあんたに会いたがってるお人がいる」
俺は、頷いた。
女は、街に向かって歩き出した。
俺は、慌ててついていく。
トセナンの街は、かなり大きな街だった。
俺は、人混みの中をすいすいとぬって歩いていく女を懸命に追いかけた。
腹立たしいことに女は、俺を振り返りもしない。
俺は、雑踏の中を女を見失わないように歩き続けた。
女は、いろいろな店舗の並んだ通りの一角にある古びた扉のノッカーを叩いた。
ここにあのお方とやらがいるのか?
俺たちが待っているとしばらくして扉が開かれて立派なねじれた角が額から2本生えている白い口ひげの老人が現れた。
「お連れしたよ」
女が短く言うと老人は、頷いて体をずらして中に入るようにと俺たちを促した。
扉の奥からはつんと鼻につくようなすえた臭いがして俺は、一瞬ひるんだ。
しかし、女が入っていってしまったのを見て、俺は、急いで中に入った。
背後で重い音がして扉が閉じられた。
「うるせぇ!」
俺は、なんとか言葉を押し出した。
女は、くすくすと笑った。
そして、俺の目を覗き込んだ。
深淵を見るとき、深淵もまた、こちらを見る。
誰の言葉だったか。
俺の脳裏にふと、その言葉が浮かんだ。
「あんた、この世の者じゃないね」
女が言った。
「転生者かぇ?」
俺の心臓が跳ね上がる。
なんで、こいつ、それを知っているんだ?
「あんたは、あたしがなんでそれを知っているのかと思ってるね」
女が低い笑い声をたてた。
俺は、女の赤い瞳から目が離せなかった。
女は、流れるような黒い髪を日本髪のように頭上に結い上げている。
美しい女だ。
だが。
化け物。
「あたしのことを恐れてるね」
女が笑いを含んだ声で告げた。
「あんたは、怒りに満ちすぎている。そして、恐れにも。ほんとに」
女が赤い唇を舌先で舐める。
「おいしそう」
おいしそう?
女は、俺にぐっと顔を近づけると俺の頬を舐めた。
「抗いがたいものに飲み込まれかけている。闇に堕ちかけた魂。あたしの好みだねぇ」
俺は、全身に冷たい汗が流れるのを感じていた。
喰われる!
俺は、龍人になってから初めて恐怖していた。
だが。
女は、ふっと真顔に戻るとつぃっと俺から離れた。
「ふん。そのお守り、憎らしい。よくきくお守りだこと。まったく気にいらないねぇ」
女は、俺に背を向けると歩き出した。
「ついてきな。この先にある街にあんたを待ってるお人がいる」
ふっと体が動いた。
俺は、女の後に続いて歩き出した。
女は、無言で歩き続ける。
俺は、必死にその後を追って歩いた。
しばらく歩くと広い場所に出た。
そこからは、大きな街が見下ろせた。
「あそこがこの40階層で一番大きな街、トセナンの街さ。あそこにあんたに会いたがってるお人がいる」
俺は、頷いた。
女は、街に向かって歩き出した。
俺は、慌ててついていく。
トセナンの街は、かなり大きな街だった。
俺は、人混みの中をすいすいとぬって歩いていく女を懸命に追いかけた。
腹立たしいことに女は、俺を振り返りもしない。
俺は、雑踏の中を女を見失わないように歩き続けた。
女は、いろいろな店舗の並んだ通りの一角にある古びた扉のノッカーを叩いた。
ここにあのお方とやらがいるのか?
俺たちが待っているとしばらくして扉が開かれて立派なねじれた角が額から2本生えている白い口ひげの老人が現れた。
「お連れしたよ」
女が短く言うと老人は、頷いて体をずらして中に入るようにと俺たちを促した。
扉の奥からはつんと鼻につくようなすえた臭いがして俺は、一瞬ひるんだ。
しかし、女が入っていってしまったのを見て、俺は、急いで中に入った。
背後で重い音がして扉が閉じられた。
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