3 / 85
第1章 奈落へ
1ー3 裏切り
しおりを挟む
1ー3 裏切り
その日の訓練を終えてやっとの思いで俺は、兵舎に戻った。
そこは、家畜小屋と少しも変わりがなかった。
俺たちは、それぞれに割り当てられた部屋に、といっても薄い壁で区切られた場所にすぎないんだが、そこに入っていった。
とにかく俺は、藁のしかれた馬小屋みたいな場所に腰を下ろして考えた。
みなは、桶に入れられたエサを食っていたが俺は、そんなもの食らう気にはなれなかった。
もとの記憶を取り戻してしまった以上は、もう生の肉なんて食えない。
俺は、真剣に考えていた。
どうすれば。
もとの場所に戻れる?
もとの姿に。
この世界で無双するにしても今の竜の姿のままじゃな。
竜のまま勇者になったとしてもかわいい女の子にだって手が出せないし!
もちろんメスの竜を抱く気になんてならないし!
どうすれば、人間に戻れるんだ?
何より、記憶が戻った今となっては、後妻と義兄にとって俺は、犯罪の証拠でもあった。
俺は、はっと気づいた。
もしかして俺、ヤバイんじゃね?
記憶を封じたとはいえ、奴らが俺を行かしておくわけがなかった。
きっと最前線に送り込まれて殺されるに違いない!
そんなのは、嫌だ!
俺は、低く呻いた。
この世界に生まれ変わる前。
ロイドになる前の俺は、正直、目立たない男だった。
まったく友達もいなければ、恋人もいない。
どこで、どうやって生きて死んだのかはわからないが、きっと面白味のない人生だったことだろう。
もう、そんなのは嫌だ!
俺は、これ以上ないってぐらい幸せになるんだ!
そのためには、なんとか人間に戻らなくては!
俺は、ここから逃げ出すことにした。
しかし、義兄たちがいる家には戻れない。
俺は、ふと婚約者のロウランのことを思い出していた。
最後のお別れのとき、涙を流してくれていた彼女なら。
俺のために力を貸してくれるに違いない。
俺は、夜陰に紛れてそっと兵舎を抜け出すことにした。
兵舎には見張りはいなかった。
何しろみな、記憶を封じられているからな。
みんな心安らかに眠っている。
俺は、兵舎から逃げ出した。
そして、そのドラグーン騎兵隊の駐屯地からさっさとおさらばした。
俺だってけっこうな大きさだ。
飛び立てばすぐにばれる。
俺は、必死にロウランのいる王都を目指して夜の空を飛んだ。
幸いなことに誰もまだ追ってはこなかった。
おそらく逃げ出すような竜騎兵は、いなかったのだろう。
かなり王都から離れていたのか。
俺は、何時間も飛び続けた。
夜が明ける頃、ようやく王都が見えてきた。
俺は、王都の中心部にある貴族街の一角にあるロウランの屋敷に向かった。
だが。
ロウランの家の庭へと降り立とうとした俺は、屋敷の警備の兵士たちによって攻撃された。
全身を魔法の矢で射ぬかれ、地上に落下した俺は、必死にロウランの姿を探した。
彼女は。
屋敷の中から俺のことを見ていた。
彼女の隣には、義兄が立っていてその肩を抱いていた。
マジかよ?
俺は、信じられない思いで二人を見つめていた。
ロウランもぐるだったのか?
「はやく、止めをさせ!」
屋敷の主であるロウランの親父さんが叫んだ。
殺される!
俺は、なんとか体を起こすと翼を広げて雄叫びをあげた。
早朝の王都の空に俺の叫びが響き渡る。
空気がビリビリ震えて屋敷が壊れ、兵士たちは吹き飛んでいった。
俺は、最後にもう一度、ロウランのことを見た。
彼女は。
微笑んでいた。
ああ!
俺は、背中の翼を広げると空へと飛び立った。
俺は、婚約者にも裏切られていたのか!
その日の訓練を終えてやっとの思いで俺は、兵舎に戻った。
そこは、家畜小屋と少しも変わりがなかった。
俺たちは、それぞれに割り当てられた部屋に、といっても薄い壁で区切られた場所にすぎないんだが、そこに入っていった。
とにかく俺は、藁のしかれた馬小屋みたいな場所に腰を下ろして考えた。
みなは、桶に入れられたエサを食っていたが俺は、そんなもの食らう気にはなれなかった。
もとの記憶を取り戻してしまった以上は、もう生の肉なんて食えない。
俺は、真剣に考えていた。
どうすれば。
もとの場所に戻れる?
もとの姿に。
この世界で無双するにしても今の竜の姿のままじゃな。
竜のまま勇者になったとしてもかわいい女の子にだって手が出せないし!
もちろんメスの竜を抱く気になんてならないし!
どうすれば、人間に戻れるんだ?
何より、記憶が戻った今となっては、後妻と義兄にとって俺は、犯罪の証拠でもあった。
俺は、はっと気づいた。
もしかして俺、ヤバイんじゃね?
記憶を封じたとはいえ、奴らが俺を行かしておくわけがなかった。
きっと最前線に送り込まれて殺されるに違いない!
そんなのは、嫌だ!
俺は、低く呻いた。
この世界に生まれ変わる前。
ロイドになる前の俺は、正直、目立たない男だった。
まったく友達もいなければ、恋人もいない。
どこで、どうやって生きて死んだのかはわからないが、きっと面白味のない人生だったことだろう。
もう、そんなのは嫌だ!
俺は、これ以上ないってぐらい幸せになるんだ!
そのためには、なんとか人間に戻らなくては!
俺は、ここから逃げ出すことにした。
しかし、義兄たちがいる家には戻れない。
俺は、ふと婚約者のロウランのことを思い出していた。
最後のお別れのとき、涙を流してくれていた彼女なら。
俺のために力を貸してくれるに違いない。
俺は、夜陰に紛れてそっと兵舎を抜け出すことにした。
兵舎には見張りはいなかった。
何しろみな、記憶を封じられているからな。
みんな心安らかに眠っている。
俺は、兵舎から逃げ出した。
そして、そのドラグーン騎兵隊の駐屯地からさっさとおさらばした。
俺だってけっこうな大きさだ。
飛び立てばすぐにばれる。
俺は、必死にロウランのいる王都を目指して夜の空を飛んだ。
幸いなことに誰もまだ追ってはこなかった。
おそらく逃げ出すような竜騎兵は、いなかったのだろう。
かなり王都から離れていたのか。
俺は、何時間も飛び続けた。
夜が明ける頃、ようやく王都が見えてきた。
俺は、王都の中心部にある貴族街の一角にあるロウランの屋敷に向かった。
だが。
ロウランの家の庭へと降り立とうとした俺は、屋敷の警備の兵士たちによって攻撃された。
全身を魔法の矢で射ぬかれ、地上に落下した俺は、必死にロウランの姿を探した。
彼女は。
屋敷の中から俺のことを見ていた。
彼女の隣には、義兄が立っていてその肩を抱いていた。
マジかよ?
俺は、信じられない思いで二人を見つめていた。
ロウランもぐるだったのか?
「はやく、止めをさせ!」
屋敷の主であるロウランの親父さんが叫んだ。
殺される!
俺は、なんとか体を起こすと翼を広げて雄叫びをあげた。
早朝の王都の空に俺の叫びが響き渡る。
空気がビリビリ震えて屋敷が壊れ、兵士たちは吹き飛んでいった。
俺は、最後にもう一度、ロウランのことを見た。
彼女は。
微笑んでいた。
ああ!
俺は、背中の翼を広げると空へと飛び立った。
俺は、婚約者にも裏切られていたのか!
10
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
すべてはあなたを守るため
高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~
乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。
【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】
エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。
転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。
エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。
死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。
「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」
「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」
全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。
闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。
本編ド健全です。すみません。
※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。
※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。
※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】
※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる