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第12章 二人の聖女

12ー8 喧嘩

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 12ー8 喧嘩

 「カイラ、どうしたの?なんだか顔色が悪いわよ?」
 闘技場に出る前にセシリア様がわたしを気遣ってくださった。
 わたしは、にっこりと微笑んだ。
 「少し緊張してしまって」
 「大丈夫ですよ、カイラ様」
 ルゥとルチアがガッツポーズをする。
 「あんな奴ら、カイラ様ならこてんぱんですから!」
 二人の明るさにわたしは、少し救われていた。
 これからわたしがしなくてはならないことを考えるとどうしても暗くなり勝ちなのだが、ルゥとルチアのおかげで少し元気が出たような気がした。
 鐘の音が聞こえてムスタファ王国の人々が闘技場に現れたことを知らせた。
 セシリア様がわたしたちを見回す。
 「さあ、行くわよ!」
 わたしたちが闘技場へと姿を現すと会場からいっせいに歓声があがった。
 敵チームと向かい合ってわたしたちは、立っていた。
 試合は、大将の身柄を押さえ降参させた方が勝ちだ。
 わたしたちの作戦は、わたしが先行して敵陣地へと切り込んでいきその隙にセシリア様がリータ様を押さえるというものだった。
 だが。
 それは、キルハ様がいるからかなり難しい。
 双子はともかくキルハ様がどう動くかによっては、こちらの大将であるルゥがやられてしまう。
 まず、わたしは、キルハ様をかわしつつリータ様を押さえることにした。
 そうすればこちらの陣地を守ることもできる。
 開始の合図の笛の音が聞こえる前に、わたしは、軽くその場でジャンプした。
 すべては、わたしにかかっている。
 リータ様の命も、マオの番も、この国の平和も。
 すべて、守ってみせる!
 キルハ様は、リータ様の斜め前に立ってこちらを見つめていた。
 リータ様は。
 かすかに青ざめている。
 たぶん身の危険を感じている?
 わたしは、すぅっと深呼吸した。
 キルハ様より速く動かなくては。
 わたしが身構えたとき、試合の開始を告げる笛の音が聞こえた。
 それと同時にわたしは、リータ様目指して駆け出した。
 もちろん精霊による身体強化をしているからその速度には、セシリア様たちは、ついてはこれない。
 というか、セシリア様は、わたしが飛び出すと同時にキルハ様に攻撃をしかけた。
 ナイス!
 わたしは、セシリア様に感謝した。
 一瞬、防御のためにキルハ様に隙ができた。
 それをわたしは、見逃さない。
 キルハ様をすり抜けてわたしは、リータ様の前に出た。
 いきなり飛び込んできたわたしにリータ様の表情が強ばる。
 だが。
 わたしは、リータ様を攻撃するふりをしてそっと囁きかけた。
 「大丈夫です。わたしは、あなたの見方ですから」
 リータ様がきょとんとした表情になる。
 わたしは、精霊の力でリータ様の周囲に障壁を張り巡らせた。
 これでリータ様からの攻撃も防げるし、キルハ様のリータ様への攻撃も防げる。
 リータ様を背に振り向いたわたしは、キルハ様ににっと笑いかけた。
 「さあ、喧嘩を始めましょうか」
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