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第9章 スタンピード

9ー8 毒

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 9ー8 毒

 ブリュエス侯爵家の王都の屋敷は、貴族街の中央辺りにあった。
  屋敷に到着するとわたしは、客用のティーサロンへと通された。
 そこでわたしは、しばらく一人で待つことになった。
 犬の獣人らしいメイドさんがお茶を運んでくれたのでわたしは、お茶をいただくことにした。
 一口お茶を飲むと、わたしがつけていた胸元のライファの花を象った飾りが赤く輝いた。
 はい?
 わたしは、ルシーの言葉を思い出していた。
 『きっとこの胸飾りが君を守るだろう』
 ふわりと暖かな風に包まれる。
 うん。
 これってこのお茶に毒が入れられてたってこと?
 わたしは、お茶を出してくれたメイドさんのことをじっと見つめた。
 メイドさんは、青ざめた表情でふるふると振るえている。
 わたしは、お茶のカップをテーブルに戻すと低い声で訊ねた。
 「これは、どういうことですか?」
 「あ、あの、これは」
 メイドさんがパニクっているのを冷ややかに見つめていると部屋のドアが開いてアイリス様が入ってきた。
 アイリス様は、わたしのことを見て一瞬、はっと目を見開いた。
 だが、すぐににっこりと微笑んだ。
 「お待たせしてごめんなさい、カイラ」
 妙に馴れ馴れしい様子で話しかけてきたアイリス様にわたしは、身構えた。
 アイリス様は、わたしの正面の椅子に腰かけると身を乗り出した。
 「我が家のお茶はお気に召したかしら?」
 「いえ。緊張してとても味わうどころではありませんでした」
 わたしがにっこりと笑みを浮かべるとアイリス様の笑顔が少し固くなる。
 わたしは、お茶のカップを横にのけるとアイリス様に訊ねた。
 「で?わたしになんのお話があるんでしょうか?」
 「それは」
 アイリス様が口ごもった。
 うん。
 そりゃ、答えにくいわな。
 わたしは、じっと アイリス様を見つめていた。
 「私が代わりにお答えしましょう」
 ドアが開いて入ってきたフレデリク様がアイリス様にかわってわたしの問いに答えた。
 「失礼した、カイラ。許してほしい」
 「毒をもられて許すも何もないのでは?」
  わたしが笑顔を浮かべたままきくと、フレデリク様が苦笑された。
 「ただの眠り薬です。それも、あなたには、意味がなかったようですが」
 
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