89 / 176
第9章 スタンピード
9ー1 異変
しおりを挟む
9ー1 異変
ダンジョンの朝は、早い。
わたしが辺りを見回って帰る頃には、みな起き出して朝食の準備を始めていた。
「おはよう!カイラ」
レイナが元気よく挨拶しながらわたしにお椀に入ったどろどろの粥のようなものを差し出した。
わたしは、受け取るとレイナの横に腰をおろして食べ始めた。
うん。
その茶色のどろどろのものは、思ったほど酷い味をしてはいなかった。
というか、むしろ美味しい?
少しだけ甘くて、なんだか優しい味がする。
「これ、おいしい!」
わたしが言うとレイナがえへっと笑って横目でルシーのことを見た。
「これ、ルシーディア様が作ってくださったのよ」
マジですか?
わたしは、はふはふとその粥もどきを食べるとお茶を飲んだ。
「今日は、この2階層の攻略を目指すんですか?ルシーディア様」
わたしが訊ねるとルシーは、答えた。
「一応、そのつもりだけど、無理はしないでいこう。期限までは、まだ一日あるからね」
「まあ、どうしても3階層まで攻略しなくてはいけないわけじゃないし」
エラード様が粥もどきをおかわりしながら笑顔で告げた。
「私たちは、もう、毎年攻略してきたから、たまには攻略できなくたってかまわないよ」
いやいや!
わたしは、攻略したいし!
そのとき、だ。
突然、精霊たちが騒ぎ始めた。
空気が弾けるように揺れている。
わたしは、顔をあげてダンジョンの奥を見た。
「何かが、きます!」
「ええっ?」
ルシーディア様が驚いたような顔をして空を見上げた。
なんの変哲もない夜明けの空だ。
と。
川の上流の方から耳をつんざくような獣たちの声がきこえた。
「な、なんだ?」
エラード様が立ち上がって周囲に目をこらした。
わたしたちの近くで夜営していた他の人々も異変に気付いてざわめきだした。
ぱちぱちと弾けるような音がきこえる。
精霊たちが囁いている。
「ここから逃げて!」
わたしは、立ち上がると剣を抜いた。
鞘から抜かれると剣はすぐさま姿を変え巨大な魔剣オニタリスが炎をあげた。
ひゅっと風をきって小さなリスのような魔物の大群が逃げ去っていく。
続いて、飛び角ウサギたちも、みな、我先に逃げていく。
川の上流から地響きが聞こえてくる。
腹の底から冷えるような魔物の呻き声が響き渡る。
ダンジョンの朝は、早い。
わたしが辺りを見回って帰る頃には、みな起き出して朝食の準備を始めていた。
「おはよう!カイラ」
レイナが元気よく挨拶しながらわたしにお椀に入ったどろどろの粥のようなものを差し出した。
わたしは、受け取るとレイナの横に腰をおろして食べ始めた。
うん。
その茶色のどろどろのものは、思ったほど酷い味をしてはいなかった。
というか、むしろ美味しい?
少しだけ甘くて、なんだか優しい味がする。
「これ、おいしい!」
わたしが言うとレイナがえへっと笑って横目でルシーのことを見た。
「これ、ルシーディア様が作ってくださったのよ」
マジですか?
わたしは、はふはふとその粥もどきを食べるとお茶を飲んだ。
「今日は、この2階層の攻略を目指すんですか?ルシーディア様」
わたしが訊ねるとルシーは、答えた。
「一応、そのつもりだけど、無理はしないでいこう。期限までは、まだ一日あるからね」
「まあ、どうしても3階層まで攻略しなくてはいけないわけじゃないし」
エラード様が粥もどきをおかわりしながら笑顔で告げた。
「私たちは、もう、毎年攻略してきたから、たまには攻略できなくたってかまわないよ」
いやいや!
わたしは、攻略したいし!
そのとき、だ。
突然、精霊たちが騒ぎ始めた。
空気が弾けるように揺れている。
わたしは、顔をあげてダンジョンの奥を見た。
「何かが、きます!」
「ええっ?」
ルシーディア様が驚いたような顔をして空を見上げた。
なんの変哲もない夜明けの空だ。
と。
川の上流の方から耳をつんざくような獣たちの声がきこえた。
「な、なんだ?」
エラード様が立ち上がって周囲に目をこらした。
わたしたちの近くで夜営していた他の人々も異変に気付いてざわめきだした。
ぱちぱちと弾けるような音がきこえる。
精霊たちが囁いている。
「ここから逃げて!」
わたしは、立ち上がると剣を抜いた。
鞘から抜かれると剣はすぐさま姿を変え巨大な魔剣オニタリスが炎をあげた。
ひゅっと風をきって小さなリスのような魔物の大群が逃げ去っていく。
続いて、飛び角ウサギたちも、みな、我先に逃げていく。
川の上流から地響きが聞こえてくる。
腹の底から冷えるような魔物の呻き声が響き渡る。
0
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる