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第6章 タイタノス

6ー11 『悲恋の橋』

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 6ー11 『悲恋の橋』

 荷物を片付けてからわたしとレイナとマオ、ライナスは、街へと見物に行くことにした。
 ラティマ先生は、タイタノスの長であるという気のよさげな太ったおじさんと大人の話があるとかでわたしたちは、外へとでることになったのだ。
 わたしたちの案内は、アギタスさんの息子でわたしたちと同じくらいの年齢だという少年がつとめてくれることになった。
 「アイン・レイギストです。よろしく」
 ちょこんと礼をとるアインにわたしたちもそれぞれ礼をとった。
 それからわたしたちは、アインに案内されて街を見物することになった。
 美しい水路を小舟でいきながらアインは、わたしたちに話した。
 「このタイタノスは、いつだって人で賑やかだけど、今は、特に賑やかだよ」
 アインがいうには、もうすぐ3年に一度の創生の女神ラナンの祭りがあるせいだった。
 「このタイタノスでは、鍛冶の神リーレンが信仰されているんだけど、この祭りだけは、創生の女神のための祭りなんだ」
 アインがわたしたちに説明した。
 「なんでも神様同士の取り決めなんだとか。この地に鍛冶の神の街を創るかわりに3年に一度は、創生の女神を称える祭りをすることになったらしいよ」
 アインは、わたしたちに水路から街を案内してくれた。
 「あれが、有名なタイタノスの名所、『悲恋の橋』だよ」
 アインが少し離れた欄干の美しい橋を指差した。
 うん?
 わたしは、そのとき橋からわたしたちを見つめている目に気づいた。
 その人物は慌てて黒いフードを被ったけれど、わたしは、気がついた。
 赤みがかった豪奢な金髪。
 あれは、もしかして。
 わたしは、船から岸へと飛び降りるとその人物の後を追った。
 走り去るフードの人物は、かなり足が速かったけれど、わたしほどではない。
 わたしは、路地の行き止まりでそのフードの人物に追い付いた。
 「ここで何をしておられるんですか?」
 わたしが訊ねると、その人物は、乱れた呼吸を整えるかのようにため息をついた。
 「聖女の騎士は、めざといな」
 フードをとった人物は、わたしの知っている人だった。
 わたしは、きょろきょろと周囲を見回した。
 「警護の騎士は、どこですか?殿下」
 「その呼び方は、ここではやめてくれないか、カイラ」
 王太子であるその人は、わたしを恨めしげに見つめた。
 「ここでは、ただのルシーで通っているんだからね」
 
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