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第4章 古代精霊魔法

4ー9 猫竜

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 4ー9 猫竜

 事務局長の許可をとるとわたしたちは、寮に戻ることにした。
 ライナスとは男子寮の前で別れた。
 ライナスは、心配そうな様子だったが、レイナがにっと笑ってみせると少し安心したようだ。
 「大丈夫よ、ライナス」
 レイナは、ジルを肩にのせてライナスに言った。
 「なんだか、力が漲ってくるみたいな気がするし」
 「それが心配なんだよ」
 ライナスが諦めたように小声で呟きながら木々に隠れるようにして建っているレンガ造りの建物へと去っていった。
 サリタニア王立魔法学園の男子寮は、『ノルタニア』と呼ばれていた。
 噂では、幽霊が住んでいるとか。
 こわっ!
 わたしたちは、『ドリー』に戻るとまず大食堂へと向かった。
 「もうお腹ぺこぺこ」
 レイナが大食堂のカウンターに向かいながらわたしにため息を漏らした。
 そりゃそうだろう。
 精霊を一匹、養っているのだからお腹の一つも減るというものだ。
 わたしたちは、『ドリー』名物の焼き鳥定食大盛りとデザートのプティングを受けとると食堂の隅の空いている席についた。
 周囲の人たちがわたしたちのことをちらちらとうかがっているのがわかった。
 うん。
 マオとジルのこと気になってるんだな。
 そりゃそうか。
 でも、誰もわたしたちには声をかけてはこない。
 わたしたちは、黙々と晩御飯を食べてからそれぞれの部屋へと戻った。
 一応、明日からレイナに精霊魔法を教えることになってしまったわけだったが、わたしにも鍛練の時間が必要だし、毎日というわけにはいかない。
 まあ、レイナもジルも他人を故意に傷つけようとするような人や精霊ではないしな。
 わたしが部屋に戻るとサナが待っていた。
 「お風呂の用意できていますが、どうされますか?」
 サナが部屋のテーブルに夕食を用意してくれているのを見てわたしは、はっとした。
 まずい!
 夕食を大食堂で食べてきてしまった。
 わたしは、どうしたものかと思っていた。
 だが、すぐに解決した。
 「いただきまーす!」
 事情をサナに説明するとマオがサナの用意してくれた夕食を美味しくいただくことになった。
 マオは、肉球のついた手で器用にナイフとフォークを使って上手に夕食を食べた。
 マジか?
 わたしは、じっとマオを見守りながら思っていた。
 このぶんだとマオが人化するのも間近なのかもしれない。
 竜の中には人間の姿をとるものもいる。
 猫竜は、そういった種類の竜の一種だ。
 
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