上 下
20 / 176
第2章 聖女の騎士

2ー9 パーティ

しおりを挟む
 2ー9 パーティ

 それからサリタニア王立魔法学園の入学式までは、あっという間だった。
 わたしは、アルタス様とウルティア様につれられて王都の様々な店を訪れた。
 新しい服、新しい教科書。
 ほんとに多くのものを惜しみ無くお二人は、わたしのためにあつらえてくださった。
 数着のドレスも。
 特に目を見張った柔らかなブルーの生地を使って仕立てられるドレスは、ウルティア様の命で特別料金を支払って明後日には完成させるようにと手配された。
 「明後日に大公閣下が催されるパーティーがあるの。そこであなたは、このドレスを着なくちゃいけないわ、カイラ」
 なんでも、毎年、サリタニア王立魔法学園に入学する子供たちを招いてパーティを開かれるのだとか。
 「そこには、今年、学園に入学する子供たちがみんな集まるのよ」
 ウルティア様は、にこにこ微笑まれた。
 わたしは、不安だった。
 孤児院育ちのわたしが貴族の子女の中で無事に過ごせるのだろうか。
 だけど、お二人の笑顔をみているとなんだか勇気が沸いてきた。
 うん。
 とにかくこのパーティに行かなくちゃ始まらない。
 マオがわたしの頬をぴしゃりと尻尾で叩いた。
 「あんたには、あたしがついてるってこと忘れないで、カイラ」
 わたしは、肩にのっているマオを見て頷いた。
 大公閣下のパーティの日。
 朝から『グリンヒルデ』は、大騒ぎだった。
 いつもよりはやく起こされたわたしは、『グリンヒルデ』のメイド長であるつり目の長い黒髪をしたリリアさんとわたしの部屋つきのメイドである小柄なルルゥさんの二人がかりでまず風呂に入れられた。
 いやいやいや!
 風呂ぐらい一人で入れますよ!
 抵抗も虚しくわたしは、二人に丸裸にされて全身がピンクになるまで擦られた。
 風呂がすんだら今度は、ウルティア様の指揮のもと、特注の青いドレスを着て、このボサボサの髪を結い上げられた。
 「まあ、なんて美しい髪なの」
 リリアさんが感嘆したような声を漏らす。
 「なんだかとっても変わった色だけど、すごくきれいですわね」
 「でしょう!」
 一緒に鏡を覗き込んだウルティア様が満面の笑みで答える。
 「カイラは、まるで妖精のお姫様みたいに可愛いのよ」
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

私が豚令嬢ですけど、なにか? ~豚のように太った侯爵令嬢に転生しましたが、ダイエットに成功して絶世の美少女になりました~

米津
ファンタジー
侯爵令嬢、フローラ・メイ・フォーブズの体はぶくぶくに太っており、その醜い見た目から豚令嬢と呼ばれていた。 そんな彼女は第一王子の誕生日会で盛大にやらかし、羞恥のあまり首吊自殺を図ったのだが……。 あまりにも首の肉が厚かったために自殺できず、さらには死にかけたことで前世の記憶を取り戻した。 そして、 「ダイエットだ! 太った体など許せん!」 フローラの前世は太った体が嫌いな男だった。 必死にダイエットした結果、豚令嬢から精霊のように美しい少女へと変身を遂げた。 最初は誰も彼女が豚令嬢だとは気づかず……。 フローラの今と昔のギャップに周囲は驚く。 さらに、当人は自分の顔が美少女だと自覚せず、無意識にあらゆる人を魅了していく。 男も女も大人も子供も関係なしに、人々は彼女の魅力に惹かれていく。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~

碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……

【完結】異世界で急に前世の記憶が蘇った私、生贄みたいに嫁がされたんだけど!?

長船凪
ファンタジー
サーシャは意地悪な義理の姉に足をかけられて、ある日階段から転落した。 その衝撃で前世を思い出す。 社畜で過労死した日本人女性だった。 果穂は伯爵令嬢サーシャとして異世界転生していたが、こちらでもろくでもない人生だった。 父親と母親は家同士が決めた政略結婚で愛が無かった。 正妻の母が亡くなった途端に継母と義理の姉を家に招いた父親。 家族の虐待を受ける日々に嫌気がさして、サーシャは一度は修道院に逃げ出すも、見つかり、呪われた辺境伯の元に、生け贄のように嫁ぐはめになった。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

悪役令嬢は毒を食べた。

桜夢 柚枝*さくらむ ゆえ
恋愛
婚約者が本当に好きだった 悪役令嬢のその後

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

処理中です...