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第2章 聖女の騎士

2ー6 母

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 2ー6 母

 わたしがアルタス様とウルティア様と共に竜車にのって王都を目指し旅立つ日がやってきた。
 ルドクリフ辺境伯のお屋敷の皆さんやギリウス先生に見送られてわたしたちがのった竜車は出発した。
 ちょっとしたリビングぐらいの広さのある竜車の中には、ソファやテーブルが置かれていて旅の間もわたしたちは、ゆったりと過ごすことができた。
 わたしたちは、執事のダニエルさんがいれてくれたおいしいお茶を飲みながらのんびりと旅をした。
 わたしは、竜車の端にある大きな窓に張り付いて外の景色を眺めていた。
 流れていく景色は、広大な緑の農地から徐々に離れていき果ての見えない草原に変わっていく。
 「この平原は、我が領地の南の果て、ラクロス平原だ。この平原の向こうに冒険者たちが集うダンジョンの街カリムがある」
 わたしの横から窓の外をみていたアルタス様が説明してくれた。
 「カリムは、自由都市でね。我が領土にありながら領主の私ではなく冒険者ギルドが統治しているという変わった街だ」
 自由都市。
 わたしは、遠く、草原の果てへと目をこらした。
 「いや、さすがに街道からは、カリムの街は見えないよ。カイラは、カリムの街に興味があるのか?」
 アルタス様に問われてわたしは、首を傾げた。
 「わたしは、ずっと孤児院のある街から出たことがなかったんです。アルタス様のお屋敷のある領都もまだお屋敷以外は、よく知りません」
 わたしは、ゆっくりと考えながら答えた。
 「だけど、新しい場所に行くことはなんだかとてもどきどきします」
 「そう」
 ウルティア様がにっこりと微笑んだ。
 「きっとあなたは、これから私たちの想像もできないような冒険をするんでしょうね。そしたら、必ず私たちのあのお屋敷に帰ってきていろんなお話をきかせてね、カイラ」
 わたしは、なんだか暖かなものに包まれるような気持ちがしていた。
 もし。
 前世のお母様が生きていたならこんな感じだったのだろうか。
 わたしは、なんだか涙が出そうな胸が締め付けられるような気持ちになった。
 
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