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18 ダンジョンと奴隷と支配者の関係(2)

18- 8 魂の中身

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                       18ー8   魂の中身

    俺の背筋を何か、冷たいものが走った。
   俺は、恐怖のあまり無言で猫頭から視線をそらした。
   「相変わらずつれないな、君は」
    猫頭は、少し残念そうに言うと、俺にお茶の入った茶碗を差し出した。
   「粗茶ですが」
    「お茶なんていらねぇし」
     「まあ、そう言わずに」
     猫頭が言った。
    「もしかしたら何か思い出すかもしれないよ」
    マジかよ?
   俺は、茶碗を手にとると中身をぐっと飲み干した。
   うん。
   温かくって、おいしい。
   「あれ?」
    俺の目から涙が溢れ出した。
   それは、止まらなくって。
   俺は、焦って涙を止めようとしたけど、どうすることもできなかった。
    「なん、で?」
    「ああ」
     猫頭は、囁いた。
    「もう、いいんだよ。もう、いいんだ。全ては、終わったことなんだ」
    「終わったこと?」
    「そうだよ」
     猫頭は、俺をじっと見つめた。
    「メリッサ、君は、もう、死んだんだよ」
    はい?
   俺は、キョトンとして猫頭を見た。
   「俺、死んじゃったの?」
   「はい」
    猫頭がこくりと頷いた。
    「冷凍のマグロ並みに死んでるよ」
    マジですか?
   「でも、俺は、まだ、やらなきゃいけないことが・・・」
   「メリッサ」
    猫頭がぴしゃりと言った。
   「これより先は、もう、ないんだよ。ジ・エンド。終わり、だよ」
    「でも」
    俺は、猫頭を見つめて何かを言おうとした。
   だけど。
   言葉が出ない。
   何も。
   俺は、心のどこかで思っていたんだ。
   ああ。
   もう、終わったんだ。
   その時。
   なぜか、俺は、あの温もりを思い出していた。
   暖かくって、優しい。
   俺のことを抱き締めてくれた誰か。
   あのぬくもりが恋しかった。
   「1度だけ」
   俺は、猫頭を懇願するように見つめた。
   「会いたいんだ」
    「誰に?」
    猫頭に聞かれて、俺は、ふと考えた。
    誰だったんだろうか?
   あの声は。
   あのぬくもりは。
   俺は、頭を振った。
   「思い出せない」
   「そう」
    猫頭がずずっとお茶をすすった。
   俺は、胸に手をあてて、微笑んだ。
   「でも、ここにいることは、わかる」
    「はい?」
     「ここに」
      俺は、猫頭に伝えたかったが、なんと言えばいいのかわからなかった。
    ただ。
   ここに、いる。
   俺の中に。
   魂の中に。
   
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