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14 デビュタントと5人の男たち(2)

14-10 見逃しちゃいました?

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            14ー10   見逃しちゃいました?

   ガラスを突き破って中に入ってきた黒い人影は、つぅっと俺たちの方へと走ってきた。
   「クロ?」
    「たくっ!少し目を離したらこれだ!」
     クロは、アル兄に抱かれていた俺をアル兄から奪い取ると抱き上げ駆け出した。
   ええっ?
   突然のことに俺が驚愕している間に、クロは、どんどん進んでいく。
    人波が2手に別れどんどん俺たちを通していく。
    「クロちゃん!がんばって!」
    母様がクロに声援を送る。
    はい?
   俺は、きょっとしてしまった。
    何を頑張るんですか、母様!
   クロは、俺を抱いたまま空に跳んだ。
    「ひぎゃあぁぁあっ!」
      夜空を風を切って飛行するクロに、俺は、ぎゅっとしがみついた。
     「見ろよ、メリッサ」
    クロが妙に耳をくすぐる声で囁く。
    「きれいだぞ」
    街の灯りが小さく飛び去っていくのが流星のように見えた。
   俺は、クロにしがみついたまま、クロに喚いた。
    「どこ、行くんだよ!戻れ!」
     「なんで?」
     クロが俺にきいた。
     「そんなにあの男の婚約者になりたいのか?」
    うん?
   俺は、クロの言葉に首を傾げた。
   「もう、婚約者は決まったし!」
    「マジで?」
    クロは、きょとんとして俺を見た。
    「お前じゃないのか?」
     「とにかく!」
       俺は、クロの胸を殴りながら喚いた。
    「早く、戻れってば!この駄猫!」
       俺がクロをボコボコにして戻った頃には、すでにシュナイツとその仲間たちはアル兄の部下たちに取り押さえられていた。
    ちっ!
    俺は、舌打ちした。
    1番の見所を逃しちまったぜ!
    俺がクロと共にサイナス辺境伯の執務室へと向かうとそこには、屈強な魔族の傭兵たちが何人も立っていた。
    俺たちは、彼らに止められた。
   「ここは、お客様は入れません」
    その魔族の兵士は、きれいな発音でそう俺に言った。
     俺は、兵士ににっこりと微笑んだ。
    「俺は、アレイアスたちの友人だ。通してくれ」
     「少々、お待ちください、レディ」
       兵士は、ドアの中に入っていくと中で何やら亜大陸語で話していたが、すぐに、出てきて俺に恭しく頭を垂れた。
     「失礼しました。どうぞ、お入りください」
    俺は、頷いて、部屋の中へと入っていった。
    そこには、すでに捕らえられたシュナイツ御一行様の姿があった。
    
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