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14 デビュタントと5人の男たち(2)

14-2 婚約者選びは続く

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           14ー2    婚約者選びは続く

   というわけで、ですね。
   サイナス辺境伯の婚約者選びは、これからが本番となった。
    俺と、アリシア嬢とルーチェ嬢とエリンさん?
    この4人で争われることになった。
   俺たちは、予定を変更してもう1週間滞在することになった。
     当然、エリンさんも俺たちと同じように滞在することになった。
    だが、エリンさんは、俺たちと明らかに様子が違っていた。
    なんでも、サイナス辺境伯領の中にあるコーラル村の村長の娘だというエリンさんは、俺たちの中で最年長の32才。
    外見も、普通の目立つところのない村娘風で眼鏡をかけたエリンさんは、くたびれてはいるが清潔そうな白いワンピース姿をしていた。
     「よ、よろしくお願いします」
     エリンさんは、俺たちに頭を下げた。
     エリンさんを一べつするとアリシア嬢は、言い放った。
   「なぜ、こんなところにこんな方が?」
     「それは・・」
      エリンさんが真っ赤になってうつ向いた。
    エリンさんに代わって、サイナス辺境伯が答えた。
   「実は、私とエリンは、幼い頃からの恋人同士だったのだ」
    はい?
    つまり、村娘エリンさんとできていたサイナス辺境伯は、エリンさんを婚約者に選びたかったのだが、それでは、ラートリアさんたちが納得しまいと今回、そっと内緒でエリンさんにも聖獣の種を渡して育ててもらっていたのだという。    
     「その結果、エリンの育てた種から聖獣が見事に生まれたのだ。当然、エリンにも私の婚約者になる資格があるということだ」
    マジですか?
    というか、もう、婚約者は、エリンさんでよくねぇの?
     俺は、そう思っていたのだが、納得していない人がいた。
    アリシア嬢だった。
    「私のケルベスがこんな情けない犬に負けるなんてこと、あり得ませんわ!」
      なんですと?
     俺は、グルルっと唸っているアリシア嬢の聖獣にびびっていた。
    コワッ!
    こいつ、絶対、趣味は、人に噛みつくことだろ?
    うん。
    それに比べて、エリンさんの犬は。
    なんだか、情けなくって、ヨロヨロしてて頼りないな。
    デブ猫を抱いた俺にルーチェ嬢が囁いた。
  「なんか、私たち、茅の外ですわね」
    うん。
   俺は、激しく同意した。
   だって、俺と母様は、最初からやる気なかったしな。
    だが、俺たちのことは関係なく、婚約者選びは、続けられることになったのだった。
    
    
    
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