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13 デビュタントと5人の男たち

13-11 なんの種ですか?

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                13ー11     なんの種ですか?

    俺たちは、客室へと案内されたけど、母様は、憤っていた。
    「私のメリッサをそんな品評会みたいなものに招くなんて、最低だわ!メリッサ、帰りますよ!」
    「でも、母様、馬車は、1週間後まで迎えに来ないし」
    俺は、母様をなだめようとした。
   「仕方ないから、1週間だけ我慢しよう」
    「メリッサ、あなたは、平気なの?こんなことに呼ばれるなんて!」
    母様の怒りは、おさまるどころかどんどんヒートアップしていた。
    俺は、正直に話した。
   「でも、俺は、少し、ホッとしてるんだ」
    俺は、母様に言った。
    「もう、絶対にサイナス辺境伯の婚約者にならなきゃいけないんだっておもってたけど、そう考えるとすごく落ち着かない気分になってたんだ」
   いや、落ち着かないというよりは、自分に嘘をついているような気分、だった。
    本当は、俺は、サイナス辺境伯のことなんか、好きでも嫌いでもなかったのに、自分を騙しているような気がしていたんだ。
     まあ、俺は、サイナス辺境伯のことなんて、ほとんど知らないし、好きでも嫌いでもなかったんだけど。
     ただ、もしかしたら好きになれるかもって思っただけ。
    夕食の時間になると俺たちは、大きな食堂へ招かれた。
    母様は、まだ怒りがおさまらない様だったけど、まあ、1週間だけだし諦めたみたいだった。
     その場には、5人の令嬢が全員集まっていた。
    その婚約者候補たちは、なかかなそうそうたるメンバーだった。
    王族の血を引いている本物のお姫様であるアリシア・アンドレア嬢に始まり、王都の商業ギルドの大物であるゲイリー家のお嬢様であるルーチェ・ゲイリー嬢、その他もみな名家のお嬢様ばかりだった。
     ただ、母様によると俺以外は、みな、二十歳前後の訳あり令嬢ばかりらしい。
     みな、辺境伯の花嫁になるために必死なのだろう、と母様は、見ていた。
    でも、俺たちには、関係なかった。
    俺たちは、もう、帰る気満々だったし。
    舌も蕩けるような晩餐の後、どうやらこのふざけた集いの主催者であるらしいラートリアさんが俺たちにそれぞれ、小さなリボンのついた皮の袋を渡していった。
     「これは、中に一つだけ種が入っています。それは、サイナス辺境伯が気を込められた魔法の種です。それをみなさまにはお世話していただきたいのです。この1週間の間に実がなれば、その方は、合格です」
    はい?
   俺は、小首を傾げた。
   どういうこと?
   っていうか、何の試験なんだよ?
     
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