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10 婚約と姑と5人の亜人

10-2 戦場へ!

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          10ー2    戦場へ!

   「どうしたの?メリッサ」
     ラクアスが俺のことを覗き込んできいた。
   「なんか、面白い顔をしてるぞ」
    「お、面白い顔?」
    「うん。1人百面相みたいだな」
      はい?
    ラクアスに髪と頬と唇に同時に触れられて俺は、焦った。
   なんだ?
   俺は、頬が熱くなって、ラクアスを正視できなかった。
   「あの・・平気だから、そんな、くっつかなくっても・・」
   俺は、ラクアスのことを押し離そうと奴の胸に手を置いた。けど、ラクアスは、体を離そうとはしなかった。
    「婚約者同士なら、これぐらいしないと怪しまれるよ、メリッサ」
    ラクアスが耳元で囁く。
    いや、しかしですよ?
    俺たち、まだ、11才だし。
    必要以上に友だちのライン越えなくてもいいんじゃね?
    俺は、心の中で思っていた。
   はやくアル兄たちがこっちに来てくれればいいのに。
   アル兄とクロノ、それにクロたちは、俺たちとは別でこのアラクシア王国に入国する予定だ。
   それまでに俺たちが奴等のことを探っておくということになっていた。
   というか、ラクアスの母ちゃんと姉ちゃんを救い出して、そのきに乗じてクロたちが城に乗り込んできて合流し、奴等を倒すということになっている。
    一応、連絡係は、キティとクロノなんだが、この2人に任せるのはなんか、荷が重そうな気がするんだがな。
     俺は、連絡用の従魔を造ることを考えていた。
   空想辞典によれば、それは、錬金術の応用でできる筈だった。
    「あっ・・城が・・」
     キティが呟く声をきいて、ラクアスの表情が固まった。
    馬車の中に重苦しい雰囲気が漂う。
    不味いんじゃね?
    俺は、ラクアスの冷たい手をそっと握った。
   「メリッサ・・」
     「大丈夫、うまくいくよ。俺たちを信じて」
    俺は、ラクアスを勇気づけるために魅了の力を少し混ぜて微笑んだ。ラクアスは、俺をじっと見つめていたけど、やがて、優しく微笑んだ。
   「いつか、君と本当の意味で婚約者同士になれたら、そしたら、きっと、幸せだろうな」
    そうなの?
    俺は、ラクアスの言葉を受け流しながら思っていた。
   そんな幸せは、永遠に来ないって。
   俺たちを乗せた馬車は、アラクシアの王城の門をくぐり抜け中へと入っていった。
   俺は、ぶるっと頭をふった。
   しっかりしろ、俺。
   ここから先は、戦場だ!
   いろんな意味で、な!
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