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10 婚約と姑と5人の亜人

10-1 嫁姑問題ですか?

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          10ー1  嫁姑問題ですか?
 
    「もうすぐ海が見えるよ、メリッサ」
     ラクアスが俺の肩を抱いて微笑んだ。俺は、固い笑みを浮かべた。
   「そうなんだ。ステキだなぁ」
    ああ、そうだとも。
   俺は、ぐっと拳を握りしめていた。
   我ながら、棒読みだとも!
   だいたい、俺は、前世では海辺で育ったから、海なんざ珍しくも何ともねぇし。
    「君も気に入ってくれたらいいんだが。アラクシアの美しい澄んだ海を」
     ラクアスが俺に囁く。
    近いんだよ!
    俺は、歯をくいしばって耐えていた。
   なんで俺たちがこんな小芝居をしているのか。
    それは、すべて、ルーラのせいだった。
   俺は、ルーラの言葉を思い出していた。
   「いいか?メリッサ。お前は、あくまでも善意の婚約者としてアラクシアの城へと入るんだ。そのため、お前には、偽物の魂の隷属の魔法をかけておく。偽物とはいえ、敵の目を欺くための本物の魔法だ。お前は、しばらく奴等の命令には逆らえない。それを心しておくことだ」
    マジかよ!
    こういうわけで、俺とラクアスは、婚約し、ラクアスは、婚約者を国へと連れ帰ろうとしているという設定の小芝居をしているわけだった。
     将来的には、俺は、ガーランド公国の女王になるため、アラクシアの王となるラクアスとは、遠距離婚となるわけだが、それまでは、お互いの城を行き来してお付き合いをしていくらしい。
     とは言え、俺には、結婚するつもりなんてこれっぽっちもないんだがな。
    だが、愛し合う2人がお付き合いを楽しむということで、一緒に来たのは、メイド姿のキティだけだった。
    俺は、これも断っていたのだが、キティが、どうしてもと譲らなかったため仕方なく了承した。
    「そんな危険なことをメリッサだけにさせられない」
    そうキティは、言ってくれたのだ。
    ほんと、いい子じゃないか。
   当然、クロとナノもペットのふりをして同行する気満々だったのだが、ラクアスに、それは却下されてしまった。
    「母上は、極度の動物アレルギーで」
    何、その理由?
   俺は、かなりひいていた。
   これが、嫁姑の確執の始まりとかいうやつ?
    もうすでに、姿が見えない姑にダメだしされてるのか?
    コワッ!
   ラクアスって、もしかしてマザコンなの?
   というか、こんなのただの小芝居じゃん!
   なのに、本気で拒否してるし。
   ラクアスって家族思いのいい人だけど、婚約者としては、どうなの?
    まあ。
   結婚なんてしないんだけどな。
   この件が片付いたら、すぐに、婚約破棄することになってるし。
   うん。
   俺は、感慨深く思っていた。
  人生2度目の婚約破棄かぁ。
   俺は、ぼんやりと考えていた。
   俺、前世じゃ結婚もできなかったんだが、今生でも無理なのかも。
    だって、俺、中身おっさんだし、男と結婚なんて無理。
   考えただけでもダメだ。
   ふと、アル兄とクロの顔がよぎった。
   俺は、アワアワなっていた。
   なんで?
   よりにもよって、アル兄とクロ?
   どうしたんだよ、俺!
   まさか、な。
   俺は、溜め息をついていた。
  しっかり、俺!
   初心貫徹だぞ!
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