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8 楽しい夏休み?

8-11 トキメキ?いえ、動悸です!

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    8ー11   トキメキ?いえ、動悸です!

   重症のけが人や重い病気の人にきくポーションって。
    エリクサーのこと?
    俺の空想辞典がペラペラっと開いていく。
   エリクサーのページが開かれるのを見たけどもクロノには何も言わずに、俺は、空想辞典を閉じた。
     これは、クロノの夢だもんな。
    俺がこんな風にチートでさっさと片付けるべきことじゃない。
    俺は、にっこりと微笑むとクロノに言った。
   「ちょっと気分転換に、俺の考えた新しいゲームでもしようぜ!」
    俺は、こんなときのために家でゲームを作ってきたのだ。
   といっても、正確に言えば俺が考えた訳じゃないけどな。
     俺の前世の世界にあったゲームを俺が改良したものだ。
    俺は、みんなが見守るなか、一枚の白い布に赤とか青とかの端切れで作った円をサイに縫いつけてもらったものを床の上に広げた。
   そして、2人のプレイヤーが順番にくじで出た色を手足を使って押さえていくというルールを説明した。
    「とにかくやってみよう!」
     アル兄が言うと、クロが立ち上がった。
    「まず、俺とメリッサで」
     「いや、最初は、僕とメリッサがやるべきだ」
    アル兄がクロに言った。
    「このゲームを試すのは僕らの役目だ」
    というわけで。
    「アル兄、右手で青だよ」
     「なんだって?」
      ブリッジしているクロの上に覆い被さるようにして四つん這いになっているアル兄が心底嫌そうに眉をしかめた。
    アル兄は、もぞっと体を動かして手を伸ばして端の方にある青い円へと右手を伸ばした。
   「や、やめっ!」
     クロが苦しげな声を漏らした。
    「これ以上、俺に近寄るな!」
     「仕方ないだろう。黙ってじっとしていろ、この駄猫が!」
     アル兄がクロを押さえ込んで無理矢理手を伸ばした。
   アル兄の右手が青い円に触れた瞬間にクロが体勢を崩して床の上に倒れ込んだ。
   「「わわっ!」」
    2人は、絡み合いながら床の上に転がる。
    「引き分けだね、2人とも」
     俺が言うと、クロが反論した。
    「アルムが失敗したんだから、俺の勝ちだろうが!」
   「うっ!」
     俺は、言葉に詰まった。
    確かに、クロの言う通りだった。
   仕方ないな。
   「勝者、クロ!」
    「ぃやったぁっ!」
    クロがガッツポーズをとり、アル兄は、項垂れる。
   「これで、ガーランド公国にいる間にある行事でメリッサをエスコートするのは俺に決まりだ!」
      クロがにやりと笑ったので、俺は、目をそらした。
   なんだ?
   このドキドキは?
   静まれ、俺の心臓!
   相手は、たかがクロなんだぞ!
   
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