上 下
85 / 217
8 楽しい夏休み?

8-9 それは、秘密です。

しおりを挟む
              8ー9    それは、秘密です。

   俺は、ことの真相をじいちゃんとアル兄に話した。
   俺が、オロチを倒したこと。
   雨を降らせて火事を消火したこと。
   騎士団のみんなの傷を癒したこと。
    じいちゃんとアル兄は、黙って俺の話をきいていたが、やがてじいちゃんは、俺に訊ねた。
   「メリッサよ。お前は、いったい何者なんだ?」
    はい?
   俺は、思わずキョトンとしていた。
   「俺?」
    「いや、何者であってもかまわん」
     じいちゃんが俺を力強い目で見つめた。
   「お前が何者であっても、私たちの家族であることに変わりはない。私たちは、お前を愛しているし、何があろうとも今度こそは、守り抜く。だが、今のお前の力は、以前のお前からしても異常だ。いったい、何があったというんだ?メリッサよ」
   「それは」
    俺は、少しだけ躊躇したが、すぐに、意を決してイクサール島で出会ったアトラスの話と彼から引き継いだ『賢者の石』、ラニの話を2人に話した。
    「そうか・・あの島でそんなことがあったのか」
    じいちゃんが呻いた。アル兄がじいちゃんを見つめてきいた。
   「それは・・『賢者の石』とは、いったい何なんです?お祖父様」
    アル兄に問われて、じいちゃんは頭を振った。
   「私にもよくはわからない。ただ、かつて私の師であった人が一度だけ、話してくれたことがあった」
    じいちゃんが遠くを見つめるような目をして言った。
    「昔々、この世界を揺るがすような力を持った一族がいた。彼らは、その力ゆえに忌み嫌われ、ついには滅んだ。だが、彼らの残した叡知の結晶ともいえる魔導具が残されたのだという。それが『賢者の石』だ」
   じいちゃんは、続けた。
   「その石のために世界の権力者たちが何度も争い、その度にこの世界は滅びかけたのだという。それほどの魔力をその石は持っているのだ」
    じいちゃんは、呟いた。
   「まさか、そんなものが本当に実在したとはな」
    「そんなものがメリッサの体内に?」
    アル兄は、心配そうにじいちゃんにきいた。
   「どうにかしてメリッサの中からそれを取り出すことはできないのですか?」
    「それは、恐らく不可能だろう」
    じいちゃんが答えた。
    「メリッサが前の宿主が死ぬときに彼から受け継いだ以上、次にその石がメリッサから離れるのは、メリッサの死ぬときだろうな」
    じいちゃんは、俺に向き直って言った。
    「よいか、メリッサよ」
     じいちゃんは、俺を見つめた。
    「お前の体内に眠っているその悪魔を目覚めさせてはならない」
    じいちゃんが俺の肩を掴んだ。
   「何より、お前の中にそれがあることを誰にも知られてはならない。知れば、必ず、それを手に入れようとする者が現れるからな。わかったか?メリッサ」
     「うん」
     俺は、頷いた。
    
      
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

処理中です...