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8 楽しい夏休み?

8-5 これは、売れますよ!

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         8ー5    これは、売れますよ!

   俺は、プールに入るとサーフボードを水面に浮かべてその上によじ登った。
   ゆっくりと魔力を流し込むとサーフボードは、空中に数センチ浮かび上がり、水面に波紋が広がっていく。
   俺は、ボードの上に立ち上がると慎重にコントロールして水面を走らせた。
   サーフボードは、ゆらゆらと揺れながら、進んでいく。
   なかなかバランスをとるのが難しいけど、これ、面白い!
   俺は、水面を少しスピードをあげて走らせてみた。
   プールが波立ちプールサイドにいたクロとクロノに水がかかる。
   「わわっ!」
    クロノがびしょ濡れになって声をあげた。クロは、ぶるっと体を震わせると言った。
   「やっぱ、水は、好きにはなれねぇな」
    俺は、スピードを落としてプールの中をぐるぐると回ってみた。
    うん。
   面白い!
   「キティ、これ、いいよ!最高!」
    「なんだ?この騒ぎは?」
    じいちゃんとフェンリルの子犬を連れたアル兄が庭へと入ってきた。
   「真面目に勉学に励んでいるかと思っていたんだがな」
   「大丈夫です、学園長!」
    アンナ先生が慌てて立ち上がった。
   「今日は、思ったより勉強がはかどりましたのでちょっと水遊びをしていたんです」
   「水遊び、ねぇ」
    じいちゃんは、俺たちの格好を見て眉をひそめた。
   「若い娘がこんなハレンチな格好で騒いでいるとは世も末だな」
   「メリッサ!」
    アル兄が子犬を俺に渡すために歩み寄ってきたので、俺は、サーフボードから降りてプールの外へと出た。
   アル兄は、表情も変えずに子犬を渡すと俺に言った。
   「よく似合ってるよ、その、えっと・・」
   「水着、だよ」
    「みずぎ」
     アル兄がニヤリと笑った。
   「それにその『サーフボード』もいいな。来年の夏に向けてみずぎと『サーフボード』を大量生産しよう!」
    さすが、アル兄!
   俺たちは、見つめあってニヤッと笑うと、ハイタッチした。
   フェンリルの子犬は、街中で飼っても大丈夫かどうか、健康診断やらなんやら検査があって、しばらくじいちゃんの知り合いのもとに預けていたのだが、その結果、俺の従魔として手元においてもいいという許可がおりたのだという。
      調査の結果、このフェンリルは、まだ幼い幼体のメスで、健康でなんの病気も持ってはいないとの事だった。
    俺は、この子をナノと名付けることにした。

   
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