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6 魔法学園に入学しました。

6-9 再会しました。

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          6ー9   再会しました。

    俺とクロは、その猫の後について行った。
   学園長の執務室は、この古い城のような学園の中央の緑の蔦が生い茂った塔のようになっている部分にあった。
    意外と建物の中は、光が差し込んで明るかった。
   俺は、誰もいないその園長室を見回して
から、問いかけるように俺たちを案内してきた猫のことを見た。
   猫は、俺とクロを園長室の隣にある応接室へと通してソファをすすめた。
    「どうぞ」
    猫は、器用にその肉球のある手で俺とクロにお茶を入れてくれた。俺たちは、猫が入れてくれたお茶を飲みながら学園長を待った。
   午後の日差しが暖かくって、俺は、欠伸をした。
   そのとき背後でドアの開く音がきこえた。
   「学園長、お二人がお待ちです」
   「そうか。ご苦労だったな、シン」
    あれ?
   俺は、思わず振り向いていた。
  この声は。
   「じいちゃん?」
    背後のドアの側に立っている魔導師の黒いローブ姿の背の高い、白髪の、年をとっているが男前なじいちゃんの姿を見て、俺は、じいちゃんに駆け寄って抱きついた。
   「じいちゃん!」
    「メリッサ、会いたかったぞ!」
     じいちゃんは俺を抱き締め笑った。
     「やはり、無事だったんだな。私には、わかっていた。お前は、そんな簡単にくたばるような奴ではない」
   じいちゃんの背後から咳払いが聞こえた。
   「いつまで、メリッサを独り占めしてるつもりですか?お祖父様」
   ええっ?
   俺は、信じられないというような思いでいっぱいだった。
    そっとじいちゃんの背後を覗き込んだ俺は、胸が一杯になっていた。
   そこには、学園の制服である紺のローブ姿のアル兄が立っていた。
   あれ?
   俺は、アル兄を見上げて思っていた。
   アル兄って、こんなに背か高かったっけ?
   久しぶりに見たアル兄は、俺よりずっと背か高く、どこか大人びて見えた。
    前は、儚い系の美少年って感じだったけど、今は、美青年って感じだった。
    アル兄に見つめられて、俺は、少し恥ずかしくなってうつ向いた。
   「アル兄。なんか、大人っぽくなったみたい。背が伸びてるし」
   「メリッサこそ」
    アル兄は、真面目な顔をして言った。
   「少し見ない間に、すごく綺麗になった」
   はい?
   俺は、アル兄に見つめられて頬が熱くなって、視線をそらした。
   クロがぐぅっと唸って、俺とアル兄の間に入り込んできた。
   「感動の再会は、これぐらいでいんじゃね?」

   
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