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4 賢者の石の宿主は、賢者なんですか?

4-6 ラニ

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              4ー6    ラニ

   水音がきこえる。
   雨?
  俺は、コンラッドの村の屋敷の自分の部屋にいて窓の外を見つめていた。
   うん。
  これは、夢?
   それとも、今までのが夢だったのかな?
   「どっちでも同じじゃない?」
   俺は、背後からきこえる声に振り向いた。
   それは、あの男だった。
   「あんたは・・」
    「僕、か?」
     白髪の風変わりな衣装を纏ったその男は、俺の側へと歩みより言った。
   「僕は、ラニ。この姿は、前の宿主の姿を借りてる」
   「前の宿主?」
   「そうだよ」
    ラニと名乗った男は、俺の目の中を覗き込んできた。
   「君が、僕の新しい宿主なわけか」
   「宿主?」
    「そう。僕は、今、君の中にいる。僕は、他の連中から『賢者の石』とか呼ばれている物だ」
   「マジか?」
   俺はじっとラニのことを見た。
   「俺、どうなっちゃうの?」
    「はい?」
    ラニがきょとんとして俺を見つめた。俺はもう一度、きいた。
    「あんたの宿主になったら、俺は、どうなっちゃうの?」
   「どうにもならない」
     ラニは、答えた。
   「僕は、君の中に君の一部として生きている。君は、これまでの君と何も変わらない」
   「そうなのか?」
    「ただ、君は、この世界で1番神に近い存在になっちゃったわけだけど」
   ラニは、話した。
   「気をつけないといけない。いろんな人間が君を利用しようとか、危険だとか言い出すかもしれない」
   「マジでかよ?」
    俺は、嫌な予感中だった。
   「もしかして、前の人は、ここに封じられていたのか?」
   「ああ、ある意味ね」
    ラニは、頷いた。
   「アトラスは、あの、前の宿主は、平和主義の怠け者だったからね。1人でここに引きこもることが平気なタイプだった。どちらかというと、ここに自分から隠れていたよ」
    「そうだったの?」
    俺は、きっぱりと言った。
   「俺は、そんなのは嫌だ!」
    「うん。わかるよ。君は、そういうタイプじゃないみたいだし」
   ラニは、俺に訊ねた。
   「で?君は、どうしたい?」
   「はい?」
   俺は、小首をかしげた。  
   「俺が、どうしたいかって?」
    「そうだよ」
    ラニが俺の中を覗き込んだ。
   「君を罪人として断罪した連中を殲滅することもできるし、世界を手に入れることも可能だ。君は、これからどうするつもりなの?メリッサ」
   「俺は・・」
    俺は、ラニに答えた。
   「世界をもっと知りたい。ここから、生きて家に帰りたい。アル兄と魔法学校に通いたいし、母様にまたお菓子を作ってあげたいし、父様と剣の練習をしたいし、木登りもしたいし、それに、いつかは、ワルツも踊れるようになりたい」
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