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4 賢者の石の宿主は、賢者なんですか?

4-3 恐竜ですか?

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            4ー3    恐竜ですか?

   こんな場所で1人暮らしているのにしては男の身なりは整っているし、清潔そうに見える。
   「この島に何もないなら、あんたは、どうやって暮らしてるんだ?」
   俺がきくと、男は、口許に不思議な笑みを浮かべて答えた。
   「決まっているだろう。別の世界を創造して生きているんだ」
   なんですと?
  男は、俺に向かって手招きをすると、洞窟の奥へと入っていった。
   俺は、男の後についていくことにした。
   洞窟の中は、意外なことにうっすらと明かりが差していた。
   「この洞窟には、光を発する苔が群生しているんだ」
    男は、俺に説明した。
   「この苔は、食べることもできるが、とても不味くて、腹を壊す」
   男は、どんどんと奥へと進んで行った。
   俺は、ちらりと後ろを振り向いた。
   クロの奴、大丈夫かな?
   「さっきのシュトナのことが気にかかるのか?」
   「ああ」
   俺が頷くと、男が言った。
   「いくら聖獣でも、この島を見て回るならかなりの時間がかかるだろう」
   俺たちは、しばらく奥へと歩き続けた。
   すると。
   奥から光が差してきた。
   「何?この光?」
    「これは、聖なる光、だ」
    男に言われて、俺は、目を細めて光の差す方を凝視した。
   そこには、小さな太陽系のようなものが浮かんでいた。
   「えっ?」
   俺は、立ち止まった。
   そこには、小さな宇宙が広がっていた。
   「・・マジか・・」
    小さな15センチぐらいの直径の太陽を中心にいくつかの星が巡り、1つの銀河を形成している。
    思わずその美しさに見惚れていた俺の耳元で男が囁いた。
   「これは、新しい世界。俺が創った」
    はい?
   俺は、男の方を見上げた。
   これをこいつが創ったって?
   「この世界の中に入ることもできる」
    男は、俺に向かって手を差し伸べた。
   「さあ、お手をどうぞ、マイ  レディ」
    俺は、みいられた様にゆっくりと男の方へと手を差し出した。
   男は、俺の手をとり微笑んだ。
   「私の小さな世界へ、ようこそ」
    次の瞬間、俺たちは、緑の溢れる巨大な森の中に立っていた。
   そこは、とても美しくって。
   懐かしい感じのする世界だった。
   初めて見る鮮やかな色の羽を持つ大きな鳥が羽ばたいて、俺は、びくっとした。
   鳥が飛んでいった方を見ると、そこには赤い木の実がなっていて、それを大きなトカゲのような生き物が首を伸ばして食んでいた。
   「きょ、恐竜?」
    「お前のいた世界では、彼らのことをそう呼んでいるのか?」
    男にきかれて、俺は、頷いた。
   この人は、俺が転生者だと知っている。
   
   
     
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