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3 婚約破棄から始まるわくわくスローライフ?

3-14 島についた!

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             3ー14   島についた!

   それから、数十分後。
   俺は、ボロボロになったドレスをまくりあげて、荒い呼吸を繰り返しながら辺りを見回した。
    その薄汚れた船倉の床の上には、屍累々という感じで、男たちが倒れ込んで呻いていた。
    立っているのは、俺1人。
   俺は、呼吸を整えると、大声で男たちに訊ねた。
   「で?」
     俺は、男たちを睨み付けた。
    「次は、どいつだ?」
     俺の言葉に、男たちが、びくっと体をこわばらせた。
   俺は、ゆっくりと繰り返した。
   「次は、どいつだ、ときいてるんだよ!」
    熊のような大男が俺の足元へと隠し持っていたナイフを投げてよこした。
   「もう、降参、だ」
   男は、溜め息をついた。
   「もう、勘弁してくれ。あんたには、敵わん」
    男たちは、次々と武装を解除して降参の意思を表した。
   俺は、じろり、と辺りを見て、ホッと吐息をついた。
   やった。
   俺は、くずおれそうになりながらも壁の前に積み上げられている木箱の方へと歩み寄るとそこに腰を下ろした。
    これで、とりあえず、俺の身は安全なのか?
   俺は、疲れて、体が重くって。
   だけど、まだ、安心はできない。
   気を抜いたら、こいつら、獣に何されるかわかったもんじゃない!
   そのとき、どこからか一匹の猫が俺の膝の上にとびのってきて一声にゃん、と鳴いた。
   クロ、だった。
   ちょっと、毛並みが乱れて、少し、ケガもしているようだった。
   「遅いぞ!お前」
    俺は、クロに怒鳴ると、安心のあまり、そのまま倒れ込んだ。
   意識が。
   遠ざかっていく。

    気がつくと、俺は、クロの腕の中にいた。
  「気がついたか?メリッサ」
   「クロ・・」
    俺は、ホッとしてしまって思わず、涙が込み上げてくるのを止めることができなかった。
    「クロ・・お、俺・・」
    「メリッサ、もう大丈夫、だ」
    クロは、俺を強く抱いたまま言った。
    「お前は、俺が守る」
    「なに、いってる!」
   俺は、泣きながら、怒鳴った。
    「さっきまで、どっか行ってたくせに!」
     「ああ、すまない」
    クロが、呻いた。
    「ちょっと、厄介な相手に絡まれてた。お前も知ってる、あの女、だ」
    俺は、すぐにあの軍服の女の人のことを思い浮かべた。
    「あのときの?」
    「ああ」
    クロは、頷いた。
    「とんでもない奴だった。振り切って、お前を追うのに、思わぬ時間をくった」
    「クロ・・ケガしてるのか?」
     俺は、泣きながらきいた。
    クロは、優しく笑った。
   「大丈夫、だよ。それより、お前の方がひどい格好だぞ?」
   「ほっとけ!」
    俺は、10才の女の子のようにクロの胸に顔を埋めて泣いた。
   しばらくたって、俺が泣き止んだ頃、がくん、と船体が揺れて、船の動きが止まった。
   「島に、ついたぞ!」
    誰かが、叫んだ。
   俺は、ぎゅっとクロの着ている白い、ところどころに血が滲んだシャツを握りしめていた。
    俺、これから、どうなっちゃうの?
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