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8 魔王と聖者と浄化の旅(2)

8ー12 やれます!

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 8ー12 やれます!

 僕らは、女の獣人の後について屋敷の奥へと入っていった。
 一階の奥まった部屋に通された僕たちの前に青い髪の大柄な美女が現れた。
 大柄な女は、僕らをチラッと見ると獣人の女に訊ねた。
 「サニ、この人たちは?」
 「はい、アリシア様に会いたいと言っている者たちです」
 女の獣人サニは、へりくだった態度で頭を下げるとうかがうようにアリシアさんのことを見上げた。
 アリシアさんは、手を軽く振った。
 「ご苦労だったわね、サニ」
 サニは、ほっとした様子で部屋を出ていった。
 僕は、アリシアさんのことをじっと観察していた。
 アリシアさんは、迫力のある美人の竜人族の人のようだが、怖そうな人に思われた。
 彼女は、僕のことを遠慮なくじろじろと眺めるとふん、と笑った。
 「これは、これは。アルビノの人間の美女とはね。珍しいこと。で?わたしになんの用かしら?」
 「はい。実は、ちょっとした事情がありましてこのお方を聖者様のもとに連れていっていただきたいのです」
 ソドルが声を潜めた。
 「それと、この方は女性ではございません」
 「そのようね」
 アリシアさんは、にやりと笑った。
 「まさか、聖者様がそういう趣味の方だったとは、ね。どうりでうちの子達を近寄らせないと思ったのよ」
 「では、お願いできますでしょうか?」
 「それとこれとは、話が別よ」
 アリシアさんは、きっぱりと断った。
 「こんな見ず知らずの子を大切なお客様のもとに送り出したりはできないわ」
 「それは」
 「お願いします」
 僕は、ソドルを遮って声をあげた。
 「僕を買ってください!」
 「はい?」
 アリシアさんが虚をつかれたような表情を浮かべて僕を見た。
 僕は、一歩前に踏み出すと切々と訴えた。
 「どんなことでもやります!下働きでもなんでも!」
 「あら?」
 アリシアさんは、にやりと笑った。
 「ほんとに?」
 「はい!」
 「ここでは、どんなことでもなんて気軽にいっちゃ、ダメよ、坊や」
 アリシアさんが僕に片目をつぶって見せた。
 「ところで、あなた、男と寝るのは平気なの?」
 「それは・・たぶん、いや、大丈夫です!」
 僕は、答えた。
 「やれます!」
 
 
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