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6 婚姻という呪い

6ー9 やっぱりダメっ!

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 6ー9 やっぱりダメっ!

 「あっ・・・」
 僕は、はっと我にかえってキーンを見つめた。
 僕としたことが。
 僕は、動揺していた。
 「ちょっと出掛けてくる」
 僕は、足早に部屋から出るとそのまま屋敷の外へと歩み出た。
 今からだともうヤマトたちには追い付くことはできないだろう。
 ヤマトは、僕の知らないところで死んでしまうんだ。
 僕は、涙が溢れ出すのを止められなかった。
 なんで?
 僕は、泣いてるんだ?
 僕は、ひたすらに歩き続けた。
 ヤマトは、僕には酷いことをした。
 僕を裏切り、そして陵辱した。
 なのに。
 なんで僕は、涙が止まらないんだ?
 僕の記憶の中のヤマトの笑顔が不意によみがえる。
 あの内気そうな笑顔。
 黒い髪が恥ずかしいと言っていたヤマト。
 僕がいろいろとクラスメイトたちから嫌がらせをされていたのをかばってくれた。
 学生時代は、一緒にダンジョンにももぐったし、夜営もすることがあった。
 魔法が使えず役立たずと言われていた僕のことをただ1人認めてくれていた。
 『ラムダは、ほんとにすごいよ。知識だけでみなを凌駕しているんだからね』
 そういって微笑んでくれたヤマト。
 僕は、心の中で彼の名を呼んだ。
 ヤマト!
 僕は、屋敷の近くにある小高い岡の上に上りそこにあった大木によじ登って遠くまで見渡した。
 夕闇の迫る中で遠くまで広がる魔物の森が見える。
 どこからか魔物の啼く声が聞こえた。
 「・・・ヤマト・・・」
 僕は、すぅっと息を吸い込むと叫んだ。
 「死ぬな!ヤマト!」
 絶体に!
 僕は、叫んでいた。
 僕の許しなく死ぬことは許さない!
 絶体に帰ってこい!
 僕のところへ。
 戻ってこい!
 そうしたら。

 すっかり日がくれてから僕は、メイソン辺境伯の屋敷へと戻った。
 僕の帰りが遅いことを心配したキーンが玄関で待っていた。
 「おかえりなさいませ、ラムダ様」
 ほっとした様子でキーンが僕に声をかけてきた。
 僕は、キーンへの返答もそこそこに急いでロイの執務室へと向かった。
 「ロイ、今、いい?」
 ノックすると同時に部屋へと入っていった僕にロイが答えた。
 「ラムダか」
 彼は、書類から顔をあげると僕にいつものように微笑みかけた。
 「なんだ?お前がここにくるなんて珍しいな」
 「僕、あなたに言わなくてはいけないことが」
 僕は、呼吸を整えると思いきってそれをロイに伝えた。
 「僕、やっぱりあなたたちとは結婚できない!」
 
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