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5 竜人族の里

5ー8 ディダル

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 5ー8 ディダル

 僕は、穏やかな眠りの中から目覚めていった。
 ゆっくりと目をひらいていく。
 そこは、見知らぬ場所だった。
 ここは?
 僕の脳裏をここ最近の出来事が駆け巡っていく。
 王都を追放されてやってきたメイソン辺境伯の領地で僕は、僕を王都から追放させた聖者ヤマトと再会して。
 陵辱されヤマトの子供を身籠った僕を守るために婚姻の儀を行い僕を嫁にしてくれたメイソン辺境伯。
 だが、僕は、その初夜で暗黒神ヴァルナムの神官の手でヴァルナムの子まで孕まされてしまった。
 僕は、ヴァルナムの神子から逃れるためにメイソン辺境伯の屋敷を出て。
 たどり着いた森の家でキーンと言い争いになり森へと入った。
 そこで、僕は、おかしな竜と竜人族の若者と出会って。
 ううっ。
 僕は、呻いた。
 また、僕は、エロエロモードになっちゃったのか!
 「気がついたか?」
 あの男がそばにいて僕を覗き込んでいた。
 「ひゃいっ!」
 思わず変な声を出してしまった僕に男は、クスクスと笑いを漏らした。
 「あっ・・・」
 僕は、かぁっと頬が熱くなる。
 僕は、がばっと起き上がろうとしてバランスを崩してその男の腕の中へと倒れ込んだ。
 男は、僕のことを抱き締めながら囁いた。
 「まだ動かない方がいい」
 「あ、あの、僕」
 はやく帰らなくては!
 僕は、焦っていた。
 キーンが心配しているかもしれないし。
 僕は、自分がいつの間にか白い神官の衣のような服を着せられていることに気づいた。
 「これ?」
 「安心しろ。俺以外の誰もお前には指一本触れてはいない」
 男が僕を抱き起こすと抱え込んで手に持っていた木製の椀の中身を飲ませようとした。
 「喉が乾いただろう、飲め」
 僕は、男に言われるままに椀の中身を飲み干した。
 それは、冷たくて美味しい果実水のようなものだった。
 喉を鳴らして飲み終えてほぅっと吐息を漏らした僕に男が笑顔を見せた。
 まだ少年のようなあどけないその笑顔に僕は、どきんと心臓が跳ねるのを感じていた。
 あんなに僕のことを翻弄したとは思えない幼さに僕は、しばし男の顔をじっと見いっていた。
 「お前、名は?」
 男に言われて僕は、はっとして名乗った。
 「ら、ラムダ、だ。ラムダ・トリ・ランダール」
 そう答えてから、僕は、はっとした。
 僕は、確か、ロイと結婚していたような気がする!
 男は頷くと、自分も名乗った。
 「俺は、ディダル。この竜人族の里の族長をしている」
 マジですか?
 ディダルは、僕のことを抱えあげるとその膝の上に座らせた。
 そして、辺りに置かれていた果物の中から房になった果物を一粒摘み取り僕の口へと運んだ。
 「食べろ、ラムダ」
 「んぅっ」
 口に押し込まれて僕は、ディダルの指ごと果物の粒を含んだ。
 甘酸っぱい味が口中に拡がる。
 ディダルは、ゆっくりと僕の口の中から指を抜くと僕の口の端から滴る汁を指先で拭った。
 「旨いか?ラムダ」
 僕は、口の中のものをもぐもぐと咀嚼しながら頷いた。
 ディダルは、満足げに笑った。
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