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4 邪神の神子

4ー1 隙がない!

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 4ー1 隙がない!

 特別婚姻許可証
 それは、訳アリで婚姻を急ぐカップルが教会に発行してもらうというものだった。
 たいていは、両親に反対されて駆け落ちした人たちか、それか結婚する前に妊娠してしまった人たちが申請するものだ。
 この許可を得て婚姻すれば、たとえ訳アリでも情熱的とか、愛ゆえにとかいって許されてしまうことが多い。
 というか、夢見る少女たちが夢想するようなものだった。
 いつか王子さまみたいな人と特別婚姻許可証をもらって結婚する。
 そんな独身女性の憧れ的なシチュエーションなの?
 ちなみに僕がそんなことを夢想したことは一度だってなかったし!
 だから、僕は、メイソン辺境伯が特別婚姻許可証とか言い出したとき、ぎょっとしていた。
 僕を妻にする、ですと?
 なんで、いつの間にそういう話になっちゃったの?
 僕は、別に結婚に夢なんてみてない。
 だって、この前まであの王女の婚約者だったんだからな。
 だけど、どこかで漠然と結婚は、お嫁さんをもらうものだと思っていた。
 それが、僕がお嫁さんになることに?
 ちょっと待ってください!
 僕があわあわしているとメイソン辺境伯が手を伸ばして僕の頭をポンと撫でた。
 「大丈夫だよ、ラムダ。お前のことは私が守る。お前は、安心して出産に備えてくれ」
 はいぃっ?
 僕、子供産まなくちゃいけないんですね?
 僕は、黙って下腹に手をあてると考え込んでしまった。
 僕には、もう選択権はないんですか?
 青ざめている僕の肩をそっと抱いてメイソン辺境伯が心配そうに覗き込んだ。
 「大丈夫か?ラムダ」
 いけない!
 僕は、はっとして顔をあげた。
 「大丈夫です、辺境伯」
 僕は、訊ねた。
 「ああなたの方こそ無理をしなくてもいいんですよ、メイソン辺境伯」
 「ロイダール、だ」
 メイソン辺境伯が僕に囁いた。
 「親しい者からは、ロイと呼ばれている」
 「ロ、ロイ」
 僕は、焦っていた。
 だって、メイソン辺境伯の距離感が!
 近い!
 しかも、すごい美形だし。
 きっと、この人ならどんな美女とでも結婚できるにちがいないのに、なんで僕なんかと?
 たぶん、僕に同情してだと思うけど、それは、ロイが気の毒だ。
 いくら僕がアルビノで美形だとしても、男だし。
 しかも、別の男の子供を孕んでるんだよ?
 やっぱり、ダメだ!
 僕は、隙をみてここから逃げる気持ちは変えていない。
 だけど。
 隙がないというか。
 なぜか、ロイが僕から離れない。
 しかも、密着がすごいし!
 
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