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9 戦場の天使ですか?
9ー9 婚約破棄は、ありません。
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9ー9 婚約破棄は、ありません。
「なんでロドニーのふりをしてこんなところに来たんだ!ほんとに危険なんだよ?アリシア」
オルトが真剣に怒っている。
わたしは、黙ってオルトの怒りを受け止めるしかなかった。
「オルトが心配で」
わたしが小声でなんとか答えるとオルトが少し頬を赤らめてつぶやいた。
「まったく!なんでまた・・」
「ごめんなさいぃっ!」
わたしは、オルトに謝る。
「悪意はなかったんです!」
オルトは、ふぅっと吐息をつくとわたしをじっと見つめた。
「まあ、いい。君には、一度、会いたいと思っていたし」
「オルト?」
「まず、婚約のことだけど」
わわっ!
いきなり本題に入られてわたしは、青ざめた。
やっぱり婚約破棄されちゃうの?
「わたしっ!」
「いっとくけど僕は、君との婚約を破棄なんてしないから」
はい?
わたしは、ぽけっとオルトのことを見上げていた。
オルトは、少し怒りながらも優しくわたしに告げた。
「君との婚約は、どちらかが死ぬまで解消されない」
マジですか?
わたしは、思わず涙が流れ落ちるのを止められなかった。
「オルト・・ほんと、に?」
「ああ」
オルトがポン、とわたしの頭を撫でた。
「例え、君が嫌だろうとも僕は、君を離さないからね、アリシア」
そして、オルトは、わたしをそっと抱き締めてくれた。
いつまでも泣き止まないわたしをあやすように抱いたままオルトが囁く。
「君は、僕だけの魔女、なんだから」
それから小半時は、オルトに抱き締められていた。
だって、なかなか涙が止まらなくって。
わたしが泣き止むまでオルトは、わたしを抱いていてくれた。
オルトの暖かい体温を感じてわたしは、心の中にたまっていたオリが溶けていくのを感じていた。
「オールドダーク辺境伯?」
誰かがドアをノックする音が聞こえたけど、オルトは、答えなかった。
この部屋は、オルトの私室で今、わたしとオルトは、二人っきりだった。
オルトが小声で訊ねた。
「君のエミリアおばあ様は、どこ?」
「おばあ様は・・」
わたしは、エミリアおばあ様がウィトゲンシュタット王国に密入国して『石化の病』の治療をしていることをオルトに話した。
オルトは、こくりと頷く。
「やはりそうだったんだね」
なんでも時々捕らえた敵兵が『石化の病』を直している魔女の話をしていたのだとか。
「エミリアおばあ様のおかげで敵国でも『石化の病』の流行は沈静化していっているらしい。それと同時に民が王に反旗を翻し始めているとか。恐らく、じきにこの戦争は終わるだろうな」
「ほんとに?」
わたしが問うとオルトがにっこりと微笑んだ。
「なんでロドニーのふりをしてこんなところに来たんだ!ほんとに危険なんだよ?アリシア」
オルトが真剣に怒っている。
わたしは、黙ってオルトの怒りを受け止めるしかなかった。
「オルトが心配で」
わたしが小声でなんとか答えるとオルトが少し頬を赤らめてつぶやいた。
「まったく!なんでまた・・」
「ごめんなさいぃっ!」
わたしは、オルトに謝る。
「悪意はなかったんです!」
オルトは、ふぅっと吐息をつくとわたしをじっと見つめた。
「まあ、いい。君には、一度、会いたいと思っていたし」
「オルト?」
「まず、婚約のことだけど」
わわっ!
いきなり本題に入られてわたしは、青ざめた。
やっぱり婚約破棄されちゃうの?
「わたしっ!」
「いっとくけど僕は、君との婚約を破棄なんてしないから」
はい?
わたしは、ぽけっとオルトのことを見上げていた。
オルトは、少し怒りながらも優しくわたしに告げた。
「君との婚約は、どちらかが死ぬまで解消されない」
マジですか?
わたしは、思わず涙が流れ落ちるのを止められなかった。
「オルト・・ほんと、に?」
「ああ」
オルトがポン、とわたしの頭を撫でた。
「例え、君が嫌だろうとも僕は、君を離さないからね、アリシア」
そして、オルトは、わたしをそっと抱き締めてくれた。
いつまでも泣き止まないわたしをあやすように抱いたままオルトが囁く。
「君は、僕だけの魔女、なんだから」
それから小半時は、オルトに抱き締められていた。
だって、なかなか涙が止まらなくって。
わたしが泣き止むまでオルトは、わたしを抱いていてくれた。
オルトの暖かい体温を感じてわたしは、心の中にたまっていたオリが溶けていくのを感じていた。
「オールドダーク辺境伯?」
誰かがドアをノックする音が聞こえたけど、オルトは、答えなかった。
この部屋は、オルトの私室で今、わたしとオルトは、二人っきりだった。
オルトが小声で訊ねた。
「君のエミリアおばあ様は、どこ?」
「おばあ様は・・」
わたしは、エミリアおばあ様がウィトゲンシュタット王国に密入国して『石化の病』の治療をしていることをオルトに話した。
オルトは、こくりと頷く。
「やはりそうだったんだね」
なんでも時々捕らえた敵兵が『石化の病』を直している魔女の話をしていたのだとか。
「エミリアおばあ様のおかげで敵国でも『石化の病』の流行は沈静化していっているらしい。それと同時に民が王に反旗を翻し始めているとか。恐らく、じきにこの戦争は終わるだろうな」
「ほんとに?」
わたしが問うとオルトがにっこりと微笑んだ。
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