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9 戦場の天使ですか?

9ー6 爆裂魔法

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 9ー6 爆裂魔法

 それから。
 わたしは、毎日、懸命に働いた。
 傷病者は、次から次へと運ばれてくる。
 それを治癒師たちが癒していくのだが、なかなか傷を完治することのできるような力を持つ術者は、いない。
 唯一、ここの責任者であるフレイズ・アイビー大尉だけが深い傷をおった者まで完治させることが可能だった。
 アイビー大尉というのは、初対面のときにわたしがくたびれた中年男だと思った人だ。
 休憩もなく働いて、やっと遅めの昼食をとることができるとわたしがテントの裏の木の根本に座り込むとそこに白い猫がふわりとやってきた。
 ハクビだ。
 わたしは、貧相な食事の中からも少しパンのかけらをハクビにわけてやる。
 ハクビは、少し匂いをかぐとぷいっとそっぽを向いた。
 はいはい。
 わたしは、ふぅっとため息を漏らした。
 「ハクビ、ここは、戦場で、わたしたちは兵士なのよ。我が儘言わないで」
 ハクビは、ちらっとパンを見ると諦めたようにそれをかじった。
 わたしは、ハクビだけをこの戦場につれてきたけれど、本当は、ハクビもつれてくるつもりはなかった。
 クルルたちも一緒に来たがったけどそれは、断った。
 これは、わたしの勝手な行いだ。
 みんなを巻き込むことはできない。
 「こんなのあんたの力があれば簡単に片付くんじゃないの?」
 ハクビが小声でつぶやいたのでわたしも、そっと答えた。
 「こういうことに魔女は、首を突っ込まないのよ」
 そう。
 魔女は、あくまでも人の営み、というか戦争とかには口出ししないのが普通だ。
 そのとき、爆音がして風が吹きつけた。
 テントの方だった。
 わたしが急いで戻るとそこは、酷い惨状だった。
 「敵の間者がいたんだ!」
 ラドニアが教えてくれた。
 「爆裂の魔法で自らを爆発させた」
 自爆?
 わたしは、テントのあった辺りに視線を走らせた。
 そこには、多くの怪我人たちが倒れていた。
 中には、アイビー大尉の姿もあった。
 まずい!
 このままじゃ、みんな、死んじゃう!
 わたしは、大公閣下たちとの約束を守れないことを心の中でわびた。
 みんな、ごめんなさい!
 わたしは、手を怪我人たちのいる方へと差し出すと心の中で幽霊たちに呼び掛けた。
 お願い!
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