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8 わたしが聖女?

8ー5 大公閣下

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 8ー5 大公閣下

 「最初にいっておきたいんだが、私は、君の存在を公には認知することはできない」
 お茶会の席についたわたしの本当のお父様であるゲオラム・インザーク大公閣下は、わたしにはっきりきっぱりと告げた。
 「君のことを公に認めれば君を王族たちの継承権争いに巻き込んでしまうからね。そんなことは、君のお母様も望んではいなかった」
 「わかっています」
 わたしは、こくりと頷いた。
 もともとそんなこと思いもしていなかったことだし、私自身も望んではいない。
 ゲオラム・インザーク大公閣下は、わたしに優しく語った。
 「私と君のお母様は、若い頃、恋に落ちた。それは、ほんの一瞬の奇跡のような恋だった。私たちは、お互いにひかれあい、そして、求めあった。その結果が君だ。だが、君を身ごもった君のお母様は、王都から姿を消してしまった。次に彼女が王都に現れたときには、彼女は、君をつれていたわけだ。私は、なんとか君のお母様と会って話したいと思った。だけど、それは、なかなか叶わなかった。当時の私の立場がそれを許さなかったんだ。やっと会えたとき、君のお母様は、私に君は、私の子供ではないと言った。だけど、そんなわけはなかった。私は、無理矢理祖母から伝わる王族の証である首飾りを君のお母様に渡したんだ」
 そうなんだ。
 わたしは、ゲオラム・インザーク大公閣下のことをただ見つめて黙って話をきいていた。
 なぜ、お母様が閣下のもとから去ったのかはわたしには、よく理解できなかった。
 お互い好き同士だったのに。
 でも、きっとだからこそ、二人にとってこの恋が忘れられない恋になったのだろう。
 きっと、二人にとってこれは、美しい思い出だったのだ。
 「すみません。今さら名乗り出てしまって」
 わたしは、なんだか申し訳なくってゲオラム・インザーク大公閣下に謝った。
 だって、せっかくの美しい思い出をわたしが名乗り出ることで汚してしまったのではないかと思えたからだった。
 でも、エミリアおばあ様の計画のためには仕方のないことだった。
 「エミリアおばあ様は、『石化の病』の薬のことで大公閣下をお頼りするようにと申しておりました」
 
 
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