83 / 105
7 軍資金と流行病と戦争と
7ー11 王城からの招待
しおりを挟む
7ー11 王城からの招待
お母様をなくしたことは、エミリアおばあ様にはすごい衝撃だった。
エミリアおばあ様にとっては、お母様は、大切な愛し子だったから。
そんなお母様を失ったことは、エミリアおばあ様を絶望させ、その研究を諦めさせようとした。
けれど。
「私を思い止まらせたものは、あなたでした。アリシア、あなたがいたから私は、この世界を諦めることができなかったの」
エミリアおばあ様にとっては、わたしが本物の魔女になれるかどうかなんてどうでもいいことだった。
だけど、本物の魔女になれる者であることがわかったとき、エミリアおばあ様は、わたしの父であるゲオラム・インザーク大公閣下に連絡をとったのだという。
きっと、そのときにはもう、エミリアおばあ様は、こうすることを決めていたのだろう。
「薬の存在は、あなたのお父様にも伝えています。きっと、あなたのために力になってくださることでしょう」
学園に戻ったわたしにすぐに王城からの呼び出しがあった。
王城といっても王様からの呼び出しというわけではない。
あくまでクラウス殿下のお母様からのお茶会へのご招待ということだった。
表向きは、今回、正式にクラウス殿下の婚約者となったわたしをクラウス殿下のお母様がお茶会に招いてくださるということだ。
だけど、本当は。
わたしは、お母様からもらった形見のネックレスを握りしめた。
これから、わたしがどうなるにせよ、きっと、お母様の魂がわたしを守ってくれる。
わたしは、なんの根拠もなくそう信じていた。
だって、本物の魔女にはなれなかったけれども、お母様は、わたしのお母様で。
最高の娼婦で。
そして、魔女見習いだった。
不器用だったけど、わたしのことを愛してくれていた。
優しくって、愉快な、わたしの自慢のお母様だ。
わたしは、一番好きなドレスに着替えるとクルルをポケットに忍ばせた。
王城からの迎えの馬車が到着すると、わたしは、みなが見守る中、お茶会へと出発した。
本物のお父様に会えるんだ。
お父様は。
どんな方なのだろうか。
不安と期待にわたしの胸は高鳴っていた。
お母様をなくしたことは、エミリアおばあ様にはすごい衝撃だった。
エミリアおばあ様にとっては、お母様は、大切な愛し子だったから。
そんなお母様を失ったことは、エミリアおばあ様を絶望させ、その研究を諦めさせようとした。
けれど。
「私を思い止まらせたものは、あなたでした。アリシア、あなたがいたから私は、この世界を諦めることができなかったの」
エミリアおばあ様にとっては、わたしが本物の魔女になれるかどうかなんてどうでもいいことだった。
だけど、本物の魔女になれる者であることがわかったとき、エミリアおばあ様は、わたしの父であるゲオラム・インザーク大公閣下に連絡をとったのだという。
きっと、そのときにはもう、エミリアおばあ様は、こうすることを決めていたのだろう。
「薬の存在は、あなたのお父様にも伝えています。きっと、あなたのために力になってくださることでしょう」
学園に戻ったわたしにすぐに王城からの呼び出しがあった。
王城といっても王様からの呼び出しというわけではない。
あくまでクラウス殿下のお母様からのお茶会へのご招待ということだった。
表向きは、今回、正式にクラウス殿下の婚約者となったわたしをクラウス殿下のお母様がお茶会に招いてくださるということだ。
だけど、本当は。
わたしは、お母様からもらった形見のネックレスを握りしめた。
これから、わたしがどうなるにせよ、きっと、お母様の魂がわたしを守ってくれる。
わたしは、なんの根拠もなくそう信じていた。
だって、本物の魔女にはなれなかったけれども、お母様は、わたしのお母様で。
最高の娼婦で。
そして、魔女見習いだった。
不器用だったけど、わたしのことを愛してくれていた。
優しくって、愉快な、わたしの自慢のお母様だ。
わたしは、一番好きなドレスに着替えるとクルルをポケットに忍ばせた。
王城からの迎えの馬車が到着すると、わたしは、みなが見守る中、お茶会へと出発した。
本物のお父様に会えるんだ。
お父様は。
どんな方なのだろうか。
不安と期待にわたしの胸は高鳴っていた。
17
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】貶められた緑の聖女の妹~姉はクズ王子に捨てられたので王族はお断りです~
魯恒凛
恋愛
薬師である『緑の聖女』と呼ばれたエリスは、王子に見初められ強引に連れていかれたものの、学園でも王宮でもつらく当たられていた。それなのに聖魔法を持つ侯爵令嬢が現れた途端、都合よく冤罪を着せられた上、クズ王子に純潔まで奪われてしまう。
辺境に戻されたものの、心が壊れてしまったエリス。そこへ、聖女の侍女にしたいと連絡してきたクズ王子。
後見人である領主一家に相談しようとした妹のカルナだったが……
「エリスもカルナと一緒なら大丈夫ではないでしょうか……。カルナは14歳になったばかりであの美貌だし、コンラッド殿下はきっと気に入るはずです。ケアードのためだと言えば、あの子もエリスのようにその身を捧げてくれるでしょう」
偶然耳にした領主一家の本音。幼い頃から育ててもらったけど、もう頼れない。
カルナは姉を連れ、国を出ることを決意する。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~神様がくれたのはとんでもないものでした!?〜
鶯埜 餡
恋愛
私、ミコはかつて日本でひたすら巫女として他人のための幸せを祈ってきた。
だから、今世ではひっそりと暮らしたかった。なのに、こちらの世界に生をくれた神様はなぜか『とんでもないもの』をプレゼントしてくれたようだった。
でも、あれれ? 周りには発覚してない?
それじゃあ、ゆっくり生きましょうか……――って、なんか早速イケメンさんにバレそうになってるんですけど!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

転生したので前世の大切な人に会いに行きます!
本見りん
恋愛
魔法大国と呼ばれるレーベン王国。
家族の中でただ一人弱い治療魔法しか使えなかったセリーナ。ある出来事によりセリーナが王都から離れた領地で暮らす事が決まったその夜、国を揺るがす未曾有の大事件が起きた。
……その時、眠っていた魔法が覚醒し更に自分の前世を思い出し死んですぐに生まれ変わったと気付いたセリーナ。
自分は今の家族に必要とされていない。……それなら、前世の自分の大切な人達に会いに行こう。そうして『少年セリ』として旅に出た。そこで出会った、大切な仲間たち。
……しかし一年後祖国レーベン王国では、セリーナの生死についての議論がされる事態になっていたのである。
『小説家になろう』様にも投稿しています。
『誰もが秘密を持っている 〜『治療魔法』使いセリの事情 転生したので前世の大切な人に会いに行きます!〜』
でしたが、今回は大幅にお直しした改稿版となります。楽しんでいただければ幸いです。

華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる