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7 軍資金と流行病と戦争と

7ー11 王城からの招待

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 7ー11 王城からの招待

 お母様をなくしたことは、エミリアおばあ様にはすごい衝撃だった。
 エミリアおばあ様にとっては、お母様は、大切な愛し子だったから。
 そんなお母様を失ったことは、エミリアおばあ様を絶望させ、その研究を諦めさせようとした。
 けれど。
 「私を思い止まらせたものは、あなたでした。アリシア、あなたがいたから私は、この世界を諦めることができなかったの」
 エミリアおばあ様にとっては、わたしが本物の魔女になれるかどうかなんてどうでもいいことだった。
 だけど、本物の魔女になれる者であることがわかったとき、エミリアおばあ様は、わたしの父であるゲオラム・インザーク大公閣下に連絡をとったのだという。
 きっと、そのときにはもう、エミリアおばあ様は、こうすることを決めていたのだろう。
 「薬の存在は、あなたのお父様にも伝えています。きっと、あなたのために力になってくださることでしょう」
 学園に戻ったわたしにすぐに王城からの呼び出しがあった。
 王城といっても王様からの呼び出しというわけではない。
 あくまでクラウス殿下のお母様からのお茶会へのご招待ということだった。
 表向きは、今回、正式にクラウス殿下の婚約者となったわたしをクラウス殿下のお母様がお茶会に招いてくださるということだ。
 だけど、本当は。
 わたしは、お母様からもらった形見のネックレスを握りしめた。
 これから、わたしがどうなるにせよ、きっと、お母様の魂がわたしを守ってくれる。
 わたしは、なんの根拠もなくそう信じていた。
 だって、本物の魔女にはなれなかったけれども、お母様は、わたしのお母様で。
 最高の娼婦で。
 そして、魔女見習いだった。
 不器用だったけど、わたしのことを愛してくれていた。
 優しくって、愉快な、わたしの自慢のお母様だ。
 わたしは、一番好きなドレスに着替えるとクルルをポケットに忍ばせた。
 王城からの迎えの馬車が到着すると、わたしは、みなが見守る中、お茶会へと出発した。
 本物のお父様に会えるんだ。
 お父様は。
 どんな方なのだろうか。
 不安と期待にわたしの胸は高鳴っていた。
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