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7 軍資金と流行病と戦争と

7ー10 転生者

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 7ー10 転生者

 コカトリスは、人や魔物を石化させる力を持つ魔物だが、本当は、それは石化させているのではなく、全身を骨化させているのだという。
 その骨化を解くたための薬は、コカトリスの血清から作られる。
 だが、コカトリスは、危険なうえ、最難関のダンジョンの奥に生息しているような魔物だ。
 これを生け捕りにしてくることは、不可能に思われた。
 そこでエミリアおばあ様は、他の薬品でコカトリスの血清と同じ力を持つものを再現しようとした。
 そのために何十年もの間研究を続けていたのだ。
 そして、つい最近、薬が完成した。
 薬の材料と作り方は、手帳に詳しく書かれていた。
 手帳には、エミリアおばあ様からのメッセージが書かれていた。
 「アリシア、あなたがこれを読んでいる頃には、私は、すでにこのシスナブル王国にはいないことでしょう」
 エミリアおばあ様は、薬を持って隣国のヴィトゲンシュタット王国へと旅立ったのだ。
 「この国のことは、アリシア、あなたに託します」
 エミリアおばあ様は、手紙で告げていた。
 「あなたと私。二人でこの世界を救うのよ」
 マジですか?
 薬が完成しているならわざわざエミリアおばあ様が戦争している敵国へ行く必要なんてない筈なのに。
 だが、この薬は、魔女の力がなくては作れないのだ。
 だから、エミリアおばあ様は、一人で旅立った。
 わたしは、エミリアおばあ様の決意に思わず涙していた。
 「私がヴィトゲンシュタットへ行ったことは、もうシスナブル王国には知られています。アリシア、あなたには、迷惑をかけることになるかもしれません。けれど、これが私たち魔女に与えられた使命なのかもしれません」
 エミリアおばあ様がいうには、魔女には転生者が多いらしい。
 「魔女とは、この世界が自らを守るために呼び寄せた者なのかもしれません」
 でも、魔女の血に連なる者がすべて転生者というわけではなかった。
 事実、わたしのお母様は、そうではなかった。
 だから、お母様は、魔女にはなれなかったのだ。
 「そのことを告げたとき、あの子は、とても傷ついてしまった。あなたのお母様が家を出ていったのはそのせいだといってもいいかもしれない」
 
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