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7 軍資金と流行病と戦争と

7ー4 あなたのままで

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 7ー4 あなたのままで

 そんな風にフレイズさんに言われてわたしは、顔が火照ってくるのを感じていた。
 わたしが希望?
 そんなことがあるわけがない。
 だって、わたしは。
 わたしは、フレイズさんを上目使いに睨み付けた。
 「わたしは、エミリアおばあ様とは違うのよ?」
 「よくわかっております」
 フレイズさんが頷いた。
 「だからこそ、余計に喜んでいるのでございます。あなたは、このアルトグレイス家にとっても血に連なる魔女なのでございますから」
 なんで?
 わたしは、フレイズさんのその幼子のような信頼が不思議で怖かった。
 なんで、わたしのような者をこんなにも純粋に信頼できるのか。
 エミリアおばあ様の血に連なるとはいえわたしは、まったくの異質な者にすぎないのに。
 母は、魔女であることを拒んで高級娼婦に身を墜とした。
 わたしは、最近まで父の名も知らずに生きてきた。
 しかも、わたしは、自分の保身のことしか考えてない異世界からの転生者なのだ。
 わたしは、今まで常に自分のことを一番に考えてきた。
 実際に、周囲の人々に惚れ薬を飲ませたり、EDになる魔法をかけたりしてきた。
 わたしは、自己中心的な嫌なやつでしかなかった。
 だというのに・・・
 なぜ、こんなにも暖かな愛情でみんな、わたしに接してくれるの?
 フレイズさんが黙ってわたしを見下ろした。
 「アリシア様、あなたは、立派な淑女であられます。それだけでなく、立派な魔女でもあられます。もっとご自分に自信をお持ちになってくださいませ」
 わたしは、なんだか執務室へ行ってアルトグレイス侯爵に会うことが怖くなってきた。
 ほんとに、こんなわたしがこのアルトグレイス家の魔道師の過ちを糾弾してもいいのだろうか。
 執務室へと続く廊下は永遠に続くかと思われるほど長かったが、ついに、到着してしまった。
 フレイズさんが扉を開けようとしたとき、わたしは、思わず待ったをかけた。
 「ごめんなさい、わたし・・」
 「アリシア様」
 フレイズさんは、優しい眼差しでわたしを見つめた。
 「いいのですよ、あなたは、そのままでいいのです。あなたは、今のままのアリシア・アルトグレイスで・・いや、アリシア・ラキシスでよいのです」

 
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