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5 戦争の影

5ー9 謎?

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 5ー9 謎?

 しかし、ギルさんは大人だ。
 すぐに気持ちを切り替えて、わたしたちを村で一番立派な家である自分の家へと案内するとそれなりにもてなしてくれた。
 夕食のあと、ララ様とルーシー様が部屋へと引き上げるのを待って、わたしは、ギルさんにワインの盗難について訊ねた。
 ギルさんが話してくれたところによるとワインの盗難は、数ヵ月前から始まったのだという。
 「ワイン蔵には盗難防止の魔法もかけられているんですが効果がありませんでした。もう5樽ほど盗まれていますがアルトグレイス侯爵家からはなんの音沙汰もなくって。このままだと今年の冬に国王様に献上するワインも危ぶまれます」
 うん。
 わたしは、小首を傾げた。
 あのアルトグレイス侯爵が村からの陳情に耳を傾けないなんてことがあるのだろうか。
 そして、何よりも気になるのは、フレイズさんだ。
 なぜ、フレイズさんは、アルトグレイス侯爵やロドニーにではなく、このわたしにワインの盗難の話をしたのか?
 もしかしたら、これはアルトグレイス家の内部の者が関わっているのかも。
 それでフレイズさんは、ほとんどよそ者のわたしに調べてほしいと依頼したのかもしれない。
 ギルさんは、話を続けた。
 「我々は、村でギルドの冒険者を雇ってワイン蔵の番をしてもらったりもしているんですが、今のところ効果がありません」
 わたしは、とりあえず今夜、ワイン蔵の様子を伺うことにした。
 村で雇ったという冒険者は、スキンヘッドの大男だった。
 人睨みで大型の魔物だって殺せそうなぐらいおっかない。
 「俺は、ギルドから来たクルツだ。よろしく頼む」
 「アリシア・アルトグレイスと申します。よろしくお願い致します」
 わたしは、ペコリンとお辞儀をした。
 クルツさんは、見た目によらずいい人だった。
 わたしに寒くないようにといって肩掛けを出してくれたり、暖かいお茶をすすめてくれた。
 「けっこうこの辺は夏でも夜は冷える」
 わたしとギルさんとクルツさんは、ワイン蔵の隅に身を隠して様子を見張った。
 だが、夜間特に異常はなかった。
 どういうこと?
 ギルさんは、ワイン蔵からワインの樽がなくなる、といった。
 だけど、見張っていても何も変わりはない。
 「おかしいな」
 ギルさんが倉の中の樽の数を数えて頭を傾げた。
 「ワイン樽が一つ、減っている」
 はい?
 わたしとクルツさんは、顔を見合わせた。
 
 
 

 
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