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5 戦争の影

5ー4 本当の父親

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 5ー4 本当の父親

 この世界には、知らない方がいいことがある。
 わたしは、悩んでいた。
 知るのではなかった。
 いや、知りたくなかった。
 わたしは、自分に割り当てられた部屋のベッドの上で横たわってうめいた。
 だって、まさか、わたしの本当のお父様がゲオラム・インザーク大公閣下だったなんて想像もしてなかったから。
 マジで?
 インザーク大公閣下は、クラウス殿下の叔父上で現シスナブル王国国王の腹違いの弟だった。
 とても優秀な方であり、その上、慈愛に満ちた方らしく国民からは、『すべての孤児の父』と呼ばれている。
 そんな人格者がわたしのお父様?
 信じられない。
 わたしは、首元にぶら下げた青い魔石のペンダントを握りしめた。
 高級娼婦だったお母様がたった一度だけ恋した相手。
 それがインザーク大公閣下だったの?
 インザーク大公閣下には、他国から嫁いでこられた奥方様がおられる筈。
 その方との間に二人のお子さまがおられる。
 確か、二人ともまだ幼くて魔法学園には入学されてはいない。
 わたしにも兄弟がいたんだ。
 わたしは、なんだかほっこりとした気持ちになっていた。
 わたしは、ほんとにひとりぼっちのみなしごなんかじゃなかったんだ。
 そう思うと、なんだか、心が暖かくなった。
 だが。
 今は、そんなことより乙女ゲームだ。
 予定では、夏休み明けの学園の創設記念のダンスパーティーのおりにわたしたち悪役令嬢の内の誰かが断罪されることになっていた。
 とはいえ、ヒロインは、不在だし。
 一応、わたしがロドニーと隠しキャラ以外の攻略はすませておいた。
 もちろんとても平和に攻略したので悪役令嬢たちとの軋轢もなかった。
 まあ、悪役令嬢たちも攻略しちゃったけどね。
 とにかく今のところ、わたしが断罪される要素はない筈だった。
 だが、逆に言えば何が起こってもおかしくない状態であるともいえる。
 特に、アレクシスの存在は、わけわからない。
 あいつ、ちょろちょろしてるけど今のところ誰一人攻略できてはいないし。
 いや、アレクシスが攻略できてない原因は、わたしだけどな。
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