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5 戦争の影
5ー3 魔女の系譜
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5ー3 魔女の系譜
魔女というものは、猫に似ている。
猫は、人でなく家につく。
魔女は、土地につく。
魔女は、一つの土地に根をはると一生をその土地ですごす。
なぜ、エミリアおばあ様は、このロートリッジの地を捨ててわざわざ遠くのオールドダーク領へと移ったのか。
「あなたは、エミリアおばあ様のことを知っているのね?」
「はい」
フレイズさんが頷いた。
「お小さかった頃からよく存じておりました」
マジですか?
フレイズさんは、わたしに告げた。
「エミリア様は、この地に祝福を与えてくださいました。そのおかげで今のロートリッジがあるのです。それに、エミリア様は、本当ならこのアルトグレイス家の方となるはずのお方でしたから」
はい?
わたしは、小首を傾げた。
どういうことですか?
フレイズさんは、ため息をついた。
「エミリア様は、先代のアルトグレイス侯爵であるアルム様の婚約者でございました」
エミリアおばあ様が?
わたしは、驚いて言葉を失っていた。
魔女が侯爵様の婚約者?
わたしが驚いているのを見てフレイズさんが続けた。
「あの頃はまだ魔女と婚姻を結ぶ人間はあまりいませんでした。それ故にエミリア様がこの家に嫁がれることをよく思わない者も多くおりました。エミリア様は、アルム様のことを案じられて自ら身を引かれてこの地を出られたのです」
ほぇっ?
わたしは、キョトンとしていた。
エミリアおばあ様が、魔女が土地を捨てるなんて。
あり得ない。
それほどにエミリアおばあ様は、アルトグレイス侯爵のことを愛していたんだ。
わたしは、はっとした。
「もしかしてわたしのお母様の父親って・・・?」
「はい」
フレイズさんが頷いた。
「あなたのお母様の父親は、先代のアルトグレイス侯爵であられるアルム様でございます」
マジでか?
ということは、わたしは?
「ご安心くださいませ、アリシア様」
フレイズさんが声を潜めた。
「あなたは、クリストファ様のお子ではございません。しかし、まったくの赤の他人でもございません。あなたは、ロドニー様のはとこにあたられますから」
やっぱり!
わたしは、フレイズさんに訊ねた。
「なんでアルトグレイス侯爵がわたしを隠し子と偽って引き取ったわけ?」
「それは・・」
フレイズさんが目を泳がせる。
「おそらく、あなたの本当のお父上様から頼まれたからではないかと」
「本当のお父様?」
わたしの問いにフレイズさんはこくりと頷いた。
「そうでございます。あなた様の本当のお父様であるお方は、お母様からあなたがたいそう賢くて勉強好きであることをお聞きになられていてあなたをぜひ王立魔法学園で学ばせたいと仰せでございました」
「なんで?」
わたしは、フレイズさんにきいた。
「なんで、お父様が引き取ってはくださらなかったの?」
「引き取ることができなかったのでございます」
フレイズさんが低い声で答えた。
「あなたの本当のお父上様は・・・」
魔女というものは、猫に似ている。
猫は、人でなく家につく。
魔女は、土地につく。
魔女は、一つの土地に根をはると一生をその土地ですごす。
なぜ、エミリアおばあ様は、このロートリッジの地を捨ててわざわざ遠くのオールドダーク領へと移ったのか。
「あなたは、エミリアおばあ様のことを知っているのね?」
「はい」
フレイズさんが頷いた。
「お小さかった頃からよく存じておりました」
マジですか?
フレイズさんは、わたしに告げた。
「エミリア様は、この地に祝福を与えてくださいました。そのおかげで今のロートリッジがあるのです。それに、エミリア様は、本当ならこのアルトグレイス家の方となるはずのお方でしたから」
はい?
わたしは、小首を傾げた。
どういうことですか?
フレイズさんは、ため息をついた。
「エミリア様は、先代のアルトグレイス侯爵であるアルム様の婚約者でございました」
エミリアおばあ様が?
わたしは、驚いて言葉を失っていた。
魔女が侯爵様の婚約者?
わたしが驚いているのを見てフレイズさんが続けた。
「あの頃はまだ魔女と婚姻を結ぶ人間はあまりいませんでした。それ故にエミリア様がこの家に嫁がれることをよく思わない者も多くおりました。エミリア様は、アルム様のことを案じられて自ら身を引かれてこの地を出られたのです」
ほぇっ?
わたしは、キョトンとしていた。
エミリアおばあ様が、魔女が土地を捨てるなんて。
あり得ない。
それほどにエミリアおばあ様は、アルトグレイス侯爵のことを愛していたんだ。
わたしは、はっとした。
「もしかしてわたしのお母様の父親って・・・?」
「はい」
フレイズさんが頷いた。
「あなたのお母様の父親は、先代のアルトグレイス侯爵であられるアルム様でございます」
マジでか?
ということは、わたしは?
「ご安心くださいませ、アリシア様」
フレイズさんが声を潜めた。
「あなたは、クリストファ様のお子ではございません。しかし、まったくの赤の他人でもございません。あなたは、ロドニー様のはとこにあたられますから」
やっぱり!
わたしは、フレイズさんに訊ねた。
「なんでアルトグレイス侯爵がわたしを隠し子と偽って引き取ったわけ?」
「それは・・」
フレイズさんが目を泳がせる。
「おそらく、あなたの本当のお父上様から頼まれたからではないかと」
「本当のお父様?」
わたしの問いにフレイズさんはこくりと頷いた。
「そうでございます。あなた様の本当のお父様であるお方は、お母様からあなたがたいそう賢くて勉強好きであることをお聞きになられていてあなたをぜひ王立魔法学園で学ばせたいと仰せでございました」
「なんで?」
わたしは、フレイズさんにきいた。
「なんで、お父様が引き取ってはくださらなかったの?」
「引き取ることができなかったのでございます」
フレイズさんが低い声で答えた。
「あなたの本当のお父上様は・・・」
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