51 / 105
5 戦争の影
5ー2 魔女の土地
しおりを挟む
5ー2 魔女の土地
わたしは、体調不良を理由にクラウス殿下たちをロドニーに任せるとさっさと自分に割り当てられた部屋へと向かった。
このアルトグレイスのお屋敷は、小さな城だ。
その城の南側にある立派な部屋がわたしの部屋だった。
夏だけあって外は、汗ばむぐらい暑かったけど、部屋の中は嘘みたいに涼しかった。
サリにきくとこのロートリッジ地方で産出されるという魔法石のおかげなのだという。
なんでも夏は冷気を発して屋敷の中を冷やし、冬は暖めてくれるらしい。
魔法石か。
わたしは、ベッドに横たわってぐるりと天井を見回した。
この屋敷からは幽霊たちの加護の力を感じる。
おそらく魔法石とやらに幽霊たちの力を何者かが封じているのだろう。
その力でアルトグレイス家を守っているのだ。
しかし、こんな大きな力を行使できる者がいるなんて。
わたしは、この屋敷に加護を与えたであろう者に興味を持った。
それは、たぶん魔女だ。
きっとさぞかし名のある魔女なのに違いない。
わたしは、ベッドから飛び降りるとサリに図書室の場所を訊ねた。
たぶんそこにこの地の魔女の記録が残されているのにちがいない。
わたしは、殿下たちに見つからないようにそっと気配を消して図書室へと向かった。
そこでわたしは、夕方まで本を読んで過ごした。
というか、この地の魔女の痕跡を探した。
しかし、この地に魔女がいたという記録は、残されてはいなかった。
いやいやいや。
おかしいでしょ?
これほどの力を持った魔女なのに?
痕跡も残してないなんてあり得ない。
辺りが薄暗くなったことにも気づかずにわたしが本を漁っていると突然誰かに肩を叩かれた。
「アリシア様」
「はひぃっ!」
驚いて後ろを振り向いたわたしをあのイケオジ執事フレイズさんが見下ろしていた。
わたしは、ドキドキする胸を押さえた。
「フレイズさん?」
フレイズさんは、わたしのことをじっと見つめていたが、やがて懐かしげに話し始めた。
「ああ。失礼いたしました。あなたがあまりにもエミリア様に似ておられたものですから」
「エミリア様?」
わたしは、はっと気づいた。
そうか!
この地の魔女は、エミリアおばあ様だったのか!
わたしは、体調不良を理由にクラウス殿下たちをロドニーに任せるとさっさと自分に割り当てられた部屋へと向かった。
このアルトグレイスのお屋敷は、小さな城だ。
その城の南側にある立派な部屋がわたしの部屋だった。
夏だけあって外は、汗ばむぐらい暑かったけど、部屋の中は嘘みたいに涼しかった。
サリにきくとこのロートリッジ地方で産出されるという魔法石のおかげなのだという。
なんでも夏は冷気を発して屋敷の中を冷やし、冬は暖めてくれるらしい。
魔法石か。
わたしは、ベッドに横たわってぐるりと天井を見回した。
この屋敷からは幽霊たちの加護の力を感じる。
おそらく魔法石とやらに幽霊たちの力を何者かが封じているのだろう。
その力でアルトグレイス家を守っているのだ。
しかし、こんな大きな力を行使できる者がいるなんて。
わたしは、この屋敷に加護を与えたであろう者に興味を持った。
それは、たぶん魔女だ。
きっとさぞかし名のある魔女なのに違いない。
わたしは、ベッドから飛び降りるとサリに図書室の場所を訊ねた。
たぶんそこにこの地の魔女の記録が残されているのにちがいない。
わたしは、殿下たちに見つからないようにそっと気配を消して図書室へと向かった。
そこでわたしは、夕方まで本を読んで過ごした。
というか、この地の魔女の痕跡を探した。
しかし、この地に魔女がいたという記録は、残されてはいなかった。
いやいやいや。
おかしいでしょ?
これほどの力を持った魔女なのに?
痕跡も残してないなんてあり得ない。
辺りが薄暗くなったことにも気づかずにわたしが本を漁っていると突然誰かに肩を叩かれた。
「アリシア様」
「はひぃっ!」
驚いて後ろを振り向いたわたしをあのイケオジ執事フレイズさんが見下ろしていた。
わたしは、ドキドキする胸を押さえた。
「フレイズさん?」
フレイズさんは、わたしのことをじっと見つめていたが、やがて懐かしげに話し始めた。
「ああ。失礼いたしました。あなたがあまりにもエミリア様に似ておられたものですから」
「エミリア様?」
わたしは、はっと気づいた。
そうか!
この地の魔女は、エミリアおばあ様だったのか!
16
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説
【完結】クローゼットの向こう側〜パートタイムで聖女職します〜
里見知美
ファンタジー
3年間付き合った彼氏から結婚目前で裏切られたミヤコ。
傷心というよりも呆れて物も言えない。ずっと二股かけてたなんて。
もう結婚なんて望まない。恋愛なんて糞食らえだ。私は夢に生きてやる。
慣れない都会で恋人に合わせていた生活を切り捨て、住み慣れた田舎の実家に戻ったミヤコは祖母の残した家に住むことになった。ある日、祖母の家の廊下の突き当たりに普通のドアの半分位の大きさの扉を発見。鍵を探し出して、扉を開けてみると、そこは異世界の食物庫だった……。
カクヨム・なろうでも投稿しています。
以前書きかけで止まっていたものを完結済みにして再投稿しています。
随時誤字脱字チェックをしており、他サイトと細かい言い回しが変わっているところもありますが、本筋は変わっていません。
【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい
tea
恋愛
愛読していた小説の推しが死んだ事にショックを受けていたら、おそらくなんやかんやあって、その小説で推しを殺した悪役令嬢に転生しました。
本来悪役令嬢が恋してヒロインに横恋慕していたヒーローである王太子には興味ないので、壁として推しを殺さぬよう陰から愛でたいと思っていたのですが……。
人を傷つける事に臆病で、『壁になりたい』と引いてしまう主人公と、彼女に助けられたことで強くなり主人公と共に生きたいと願う推しのお話☆
本編ヒロイン視点は全8話でサクッと終わるハッピーエンド+番外編
第三章のイライアス編には、
『愛が重め故断罪された無罪の悪役令嬢は、助けてくれた元騎士の貧乏子爵様に勝手に楽しく尽くします』
のキャラクター、リュシアンも出てきます☆
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。
ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!
悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~
イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?)
グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。
「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」
そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。
(これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!)
と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。
続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。
さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!?
「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」
※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`)
※小説家になろう、ノベルバにも掲載
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
転生先は推しの婚約者のご令嬢でした
真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。
ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。
ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。
推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。
ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。
けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。
※「小説家になろう」にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる