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5 戦争の影

5ー2 魔女の土地

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 5ー2 魔女の土地

 わたしは、体調不良を理由にクラウス殿下たちをロドニーに任せるとさっさと自分に割り当てられた部屋へと向かった。
 このアルトグレイスのお屋敷は、小さな城だ。
 その城の南側にある立派な部屋がわたしの部屋だった。
 夏だけあって外は、汗ばむぐらい暑かったけど、部屋の中は嘘みたいに涼しかった。
 サリにきくとこのロートリッジ地方で産出されるという魔法石のおかげなのだという。
 なんでも夏は冷気を発して屋敷の中を冷やし、冬は暖めてくれるらしい。
 魔法石か。
 わたしは、ベッドに横たわってぐるりと天井を見回した。
 この屋敷からは幽霊たちの加護の力を感じる。
 おそらく魔法石とやらに幽霊たちの力を何者かが封じているのだろう。
 その力でアルトグレイス家を守っているのだ。
 しかし、こんな大きな力を行使できる者がいるなんて。
 わたしは、この屋敷に加護を与えたであろう者に興味を持った。
 それは、たぶん魔女だ。
 きっとさぞかし名のある魔女なのに違いない。
 わたしは、ベッドから飛び降りるとサリに図書室の場所を訊ねた。
 たぶんそこにこの地の魔女の記録が残されているのにちがいない。
 わたしは、殿下たちに見つからないようにそっと気配を消して図書室へと向かった。
 そこでわたしは、夕方まで本を読んで過ごした。
 というか、この地の魔女の痕跡を探した。
 しかし、この地に魔女がいたという記録は、残されてはいなかった。
 いやいやいや。
 おかしいでしょ?
 これほどの力を持った魔女なのに?
 痕跡も残してないなんてあり得ない。
 辺りが薄暗くなったことにも気づかずにわたしが本を漁っていると突然誰かに肩を叩かれた。
 「アリシア様」
 「はひぃっ!」
 驚いて後ろを振り向いたわたしをあのイケオジ執事フレイズさんが見下ろしていた。
 わたしは、ドキドキする胸を押さえた。
 「フレイズさん?」
 フレイズさんは、わたしのことをじっと見つめていたが、やがて懐かしげに話し始めた。
 「ああ。失礼いたしました。あなたがあまりにもエミリア様に似ておられたものですから」
 「エミリア様?」
 わたしは、はっと気づいた。
 そうか!
 この地の魔女は、エミリアおばあ様だったのか!
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