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5 戦争の影

5ー1 波瀾含みの夏休み

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 5ー1 波乱含みの夏休み

 ダンジョンでのオリエンテーションが終わると夏季休暇がやってくる。
 わたしは、ロドニーと一緒にアルトグレイス家の領地であるロートリッジ地方へと旅立つこととなった。
 アルトグレイス侯爵家の領地であるロートリッジ地方は、王都から馬車で丸一日ほどのところにある。
 シスナブル王国を横切って流れていく大河シーズナル河のほとりに広がる豊穣な平野は、シスナブル王国の穀物庫と呼ばれている。
 シスナブル王国に流通する小麦の約半分はアルトグレイス侯爵領で収穫されたものだという。
 そして、領地の北西に見えるなだらかな嶺の麓にはもう一つの産物であるブドウ畑が広がっている。
 このブドウは秋になると収穫されワインになる。
 ロートリッジ産のワインは、シスナブル王国国王にも献上されるほどの名品だとロドニーが話してくれた。
 王都から到着したわたしたちを小さな、といっても普通に立派な城だけど、アルトグレイス家のお屋敷の前で出迎えてくれたのは、アルトグレイス侯爵家の使用人たちだった。
 「おかえりなさいませ、ロドニー様、アリシア様」
 使用人を代表してイケオジ執事のフレイズさんが礼をとった。
 ロドニーとわたしを見つめるフレイズさんは、心なしかうっすらと涙ぐんでいる。
 うん?
 わたしは、小首を傾げた。
 ロドニーはわかるけど、なんでわたしまで?
 「フレイズ、元気そうで何よりだ」
 ロドニーがフレイズさんに優しく声をかける。
 「今回は、アリシアと私の学友たちとそれに・・クラウス殿下もお忍びで逗留されることになっているからよろしく頼む」
 「はっ!」
 もと騎士だというフレイズさんがびしっと敬礼した。
 「このフレイズ、一命をとしてもアルトグレイス家の名に恥じぬもてなしをいたします!」
 いやいや。
 別に一命をとさんでも。
 わたしは、もうすでにゲンナリしていた。
 行きの馬車の中でのイケメンたちの作り出す甘い雰囲気にすっかり悪酔いしていたのだ。
 早く一人になりたい。
 うん?
 もちろん悪役令嬢のみなさんもおみえですよ。
 そして、なぜかアレクシスとその双子の姉であるアナベル・ビットスターまで同行していた。
 なんで?
 わたしは、心の中でシャウトしていた。
 学園でいつもべったりされているから夏休みぐらいのんびりしたいのに!
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