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4 ダンジョンでどっきり!?

4ー12 恋人たちのダンジョン

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 4ー12 恋人たちのダンジョン

 「これ、あげたら、タロさんのこといじめない?」
 少女が訊ねる。
 タロさん?
 わたしは、首を傾げた。
 「誰、それ?」
 「タロさんは、お前たちが今いじめている骸骨の人。タロさんは、あたしを守ってくれてる」
 はい?
 少女は、ユキと名乗った。
 彼女は、本来表のダンジョンマスターとしてダンジョンの攻略を目指す人々に殺されるべき存在だった。
 ダンジョンコアが無事である限り、なんどでも甦るのだが、そんなことを何百年も繰り返している内に魂とでもいえるものが宿ったらしい。
 ユキとタロは、いつしかお互いを思いあうようになった。
 まあ、仕方がないな。
 二人ともこのダンジョンからでることもできない以上、お互い以外に世界にわかりあえる者は、いないわけだし。
 そして、タロは、ユキが殺されるのを見ることに耐えられなくなった。
 「で、最初から自分が戦うようになった、と?」
 わたしにきかれてユキは、こくこくと頷いた。
 「なんだか、かわいそうですわね」
 話をきいていたマリアンナ様たちも同情的だ。
 わたしも鬼ではない。
 そんな話をきいてしまったらもう、あの骸骨を倒そうとは思えなくなってしまった。
 「とにかくあの骸骨を止めてくれる?」
 わたしがいうとユキは、こくりと頷き、叫んだ。
 「タロさん!やめて!」
 「ユキ?」
 骸骨が手を止めて振り向いた。
 
 そうして話し合いの結果、わたしたちは、隠し部屋の財宝をすべていただく代わりに二人を見逃すことになった。
 ちょっと、ゲーム的にはまずいかもしれないけど、これ以上攻略対象との絆を深める必要もないしな。
 隠し部屋のことは、報告しなくてはいけないから、二人の存在も話すことになった。
 アレン先生は、この話をきくと涙ぐんだ。
 「魔物でも愛があるんだ」
 そうして、このダンジョンは、この後、恋人たちのダンジョンとして有名になる。
 いわく二人で攻略に入ったら恋が実るとかなんとか。
 めでたし、めでたし。
 「めでたくなんてないわよ!」
 アレクシスが一人、ぶつくさ文句を言っていた。
 「あたしのイベントだったのに!」
 仕方がない。
 恋する二人を引き裂いて何の乙女ゲームか。
 乙女ゲームの世界は、恋する人々に優しい世界なのだ。
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