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4 ダンジョンでどっきり!?

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 実は、この乙女ゲームのファンには、男性も多かった。
 それは、乙女ゲームにあるまじき戦闘ゲームの充実さのせいだった。
 このシスナブル王国の始祖が冒険者たちだったという設定のせいかもしれないがけっこう戦闘シーンが重視されていた。
 わたしは、この戦闘シーンの攻略が苦手でたくさん課金させられたことを思い出していた。
 そのうちの一つが学期末のダンジョンでのオリエンテーションだった。
 このダンジョンでのオリエンテーションでうまくゲームを攻略できればイケメンたちともぐっと距離が近づくのだが、それがなかなか難しいのだ。
 その理由は、ダンジョンに眠っている真のダンジョンマスターの存在にあった。
 そいつは、とんでもないものだった。
 どうとんでもないのかというとちょっと記憶が定かではないのだが、とにかくとんでもない敵だということだけはわかった。
 だが。
 わたしには、勝算があった。
 どんな敵であれ、魔女の末裔であるこのアリシアであれば攻略できる。
 なぜなら、このアリシア・アルトグレイスには、幽霊たちがついているから。
 それに、わたしには、究極の奥の手があったし。
 それは、ダンジョンの奥深くでわたしを、というかヒロインを待っている筈のものだった。
 確か、この度わたしたちが向かうダンジョンの奥には聖遺物と呼ばれるアイテムが眠っているはずなのだ。
 それは、普通のゲームでは課金しなくては手に入れることができない。
 しかし、この世界では違う(ような気がする)
 だが、当然、このことはアレクシスも知っているわけだった。
 わたしは、ゲームを攻略しつつ聖遺物をアレクシスよりも早く手に入れなくてはならない。
 しかし。
 当然のことだが、学園側も生徒たちもこんな事情はご存じない。
 オリエンテーションという名の通り、みんな、遠足に毛の生えたもの程度にしか思っていない。
 わたしは、アルトグレイス侯爵家のみなさんに頼んであるものを借り受けた。
 それは、アルトグレイス家に伝わるミスリルの鎧だった。
 これがあれば安心だ。
 乙女ゲーム内でもこのミスリルの鎧を着ていたアリシアだけは、怪我を負うこともなかった。
 まあ、だからといってもヒロインと攻略対象の愛のパワーの前には、叶わないんだけど。
 もともとの乙女ゲームでは、ヒロインと攻略対象のラブパワーが高まることで聖遺物が発動して敵を倒すのだ。
 この聖遺物を手に入れるために何度課金したことか。
 このシーンの攻略のためにわたしは、バイトをしていたのだ。
 なんのバイトかって?
 それは、牛のエサやりのバイトだった。
 牛のエサやりのバイトをなめてはいけない。
 朝早くから晩遅くまで働いてわずかな給金を得ていたことを思い出したときわたしは、思わず泣いていた。
 そうまでして手に入れた聖遺物でやっとこのシーンを攻略できたのだ。
 
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