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3 どきどきの学園生活ですか?

3ー3 盗み食いですか?

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 3ー3 盗み食いですか?

 わたしは、寮の厨房で一人夜なべして惚れ薬入りのクッキーを焼き続けた。
 何枚も、何枚も。
 いろんな思いを込めて焼いていく。
 そして、大量の怪しいクッキーが出来上がると、わたしは、それを冷ましながら使わせてもらった道具を洗うために裏の井戸へと水を汲みに行った。
 この世界の不便なところはいろいろあったが、水道がないことは特に不便だ。
 わたしが裏の井戸から木桶一杯の水を汲んで戻ってくると何者かが厨房に入り込んでいた。
 「だ、誰?」
 わたしが声をかけるとその誰かは、慌てて逃げ出した。
 灯りを落とされた食堂にうっすらと浮かび上がる白い影が後ろ姿で逃げていく。
 幽霊?
 いや、そんなわけがない!
 わたしは、急いで追いかけるとその影を捕まえた。
 「待ちなさい!」
 わたしががしっと腕をとらえるとその人物は、捕まっていない方の手でわたしに抵抗してきた。
 逃がすもんか!
 わたしは、ひっしと握った手に力を込めた。
 これ以上、クッキーを焼くのは嫌なのよ!
 けっこう小遣いもかかってるし!
 わたしは、灯りがついた場所へとその賊を引っ張っていくと顔を見た。
 「ふぇえっ!」
 思わず驚きのあまり変な声が出る。
 賊は、わたしの手を振りほどくと開き直って言い放った。
 「無礼ですわよ!この私を誰だと思っているの!」
 誰って。
 わたしが焼いたクッキーを勝手に食べた泥棒?
 だけど、その正体は。
 暗闇に浮かび上がる美しい銀の髪に、青い瞳。
 それは、まぎれもなくこの乙女ゲームの世界の最強悪役令嬢、マリアンナ・フランセーズその人だった。
 なんで?
 わたしは、呆気にとられていた。
 なんでこんな深夜にお嬢様がこんなところに?
 しかも、よく見たらフリルがいっぱいついたかわいい夜着姿だし。
 「あの」
 わたしは、おずおずとマリアンナ様に訊ねた。
 「もしかしてクッキーを召し上がられました?」
 わたしの質問にマリアンナ様は、きっとわたしを睨み付けたかと思うと、きっぱりと答えた。
 「ええ、いただいたわ。なかなかおいしいクッキーでしたわよ」
 マジですか?
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