魔女見習いは、スパダリたちに溺愛される～乙女ゲー世界のモブなんですが、なぜかヒロインポジなんですけど～

3 どきどきの学園生活ですか？

3ー2 きかないの？

　３ー２　きかないの？

　「なんで？おいしいよ」
　オルトは、パクパクとクッキーをつまんで食べてしまった。
　ああっ！
　特製のクッキーが！
　わたしは、愕然としてしまった。
　だが、オルトは、知らん顔で満足そうに笑った。
　「おいしかった」
　マジですか？
　わたしは、恐る恐るオルトに訊ねた。
　「体、大丈夫？なんか、熱っぽいとかない？」
　「ああ？」
　オルトがわたしをまじまじと見つめた。
　「なんで？」
　オルトは、いつもと変わらない様子だった。
　うん？
　わたしは、小首を傾げた。
　なんで惚れ薬がきかないの？
　もしかして薬作りに失敗した？
　オルトに女子寮まで送ってもらってからわたしは、残ったクッキーを女子寮に住み着いている猫に与えてみた。
　その猫は、女子寮の主と呼ばれている白い猫で誰にもなつかないことで有名だった。
　わたしは、猫の餌場の辺りにクッキーを置くと物陰に隠れた。
　やがて現れた白い猫は、猫というより狸かなんかのようだった。
　まるまる肥えている。
　おそらく寮長が餌を与えすぎているのだろう。
　猫は、くんくんとクッキーの匂いを嗅いでいたが、やがてカリカリっと音をたてておいしそうにクッキーをかじり始めた。
　そして。
　食べ終わった猫は、急にわたしの隠れている辺りへと近づいてくると鳴き始めた。
　「うにゃあん！」
　な、何？
　わたしがびびっていると猫は、わたしの足元へと近寄ってきて頭をしきりに擦り付け始めた。
　は、発情している？
　尻尾をピンと立ててじゃれついてくるブタネコを見下ろしていると、餌を持ってきた寮長が微笑ましげに言った。
　「あらあら、ハクビちゃんったらアリシアさんにすっかりなついちゃって」
　はいぃっ？
　わたしは、ひきつった笑いを浮かべていた。
　これ、懐いているというか、発情していませんか？
　寮長のロンダ婦人は、目を細める。
　「今までハクビちゃんがなついた生徒なんていなかったのに、珍しいこと」
　わたしは、笑顔で寮長に猫を押し付けるとその場から立ち去った。
　猫は、確かに惚れ薬に反応していた。
　じゃあ、なんでオルトには、きかなかったのか？
　そこでわたしは、はっと気づいた。
　オルトは、わたしの伴侶であり主人であった。
　つまり、わたしの魔女としての力は、オルトにはきかないのだ。
　納得したわたしは、もう一度、厨房を借りてクッキー作りに励むことにした。
　今度こそ、やってやる！