魔女見習いは、スパダリたちに溺愛される～乙女ゲー世界のモブなんですが、なぜかヒロインポジなんですけど～

2 うきうき学園生活？

2ー11 犬にしてやる！

　２ー11　犬にしてやる！

　「はっくしゅっ！」
　わたしがくしゃみをして鼻水をすすっているのを見てサリがため息をついた。
　「長湯されたうえに裸で騒がれていたから」
　失敬な！
　わたしは、内心サリの言葉にムカついていた。
　まるでわたしが変態のようではないか。
　だが、事実なので何も言い返すことができない。
　わたしは、サリが入れてくれた温かいお茶を飲みながらうめいた。
　遠い記憶を探っていく。
　わたしは、前世の自分の名前すら知らない。
　ただ、漠然とした前世というものの存在を知っているというだけで、自分がどんな人生を生きていたのかも知らなかった。
　だが、この乙女ゲーム『夜と霧の恋人たち』のことは、うっすらとだが覚えていた。
　確か、物語の中に登場する攻略対象は全部で７人。
　うち一人は、全ルート攻略が終わらないとわからない隠しキャラだった。
　実は、わたしは、この隠しキャラが誰なのか知らなかった。
　たぶん、わたしは、このゲームを完全攻略できなかったのだろう。
　だが、他の６人は、覚えていた。
　一人目が入学式にも出席していた生徒会長である王太子クラウス・フォン・シスナブル。　
　二人目は、新入生代表のサイラス・フランセーズ。
　彼は、公爵家の嫡男であり、この乙女ゲームの最強の悪役令嬢であるマリアンナ・フランセーズの弟だ。
　３人目は、まだ見かけていないが王太子の腰巾着であるライナ・メイヤーズ。
　ライナは、宰相の息子であり子供の頃からクラウス王太子殿下の腹心となるべく育てられたという人物だった。
　４人目が王立魔法学園の魔法教師である天才魔道師アレン・ダナトス。
　５人目がアレンの友人でもあり、魔法学園に剣術の講師としてやってくる宮廷騎士団の団員フランシス・マイヤー。
　そして、最後。
　６人目がわたしの腹違いの弟であるロドニ－・アルトグレイスだ。
　最後まで完走できなかったとはいえわたしだって血反吐を吐いて課金しまくってきたのだ(たぶん)。
　「敵に不足はないわ！やってやる！」
　わたしは、低い声で呟いた。
　「お前ら全員、わたしの犬にしてやる！」