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1 ヒロイン逃走!
1ー3 幼馴染み
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1ー3 幼馴染み
少年は、歩き疲れたころに置かれている食料や飲み物に不信感を隠さなかった。
だけど、飢えには勝てない。
懸命に食べて、満腹になるとそのまま木にもたれて眠ってしまった。
わたしは、足音を忍ばせてその少年のそばへと近づいていった。
少年は、目だったところもない普通の男の子だった。
わたしは、眠っている少年をしばらく観察すると気が済んでその場から離れようとした。
そのとき、だ。
「かあさま」
少年が寝言で呟いた言葉は、わたしの心をとらえた。
うん。
どんな夢をみているのか。
少年は、泣きながら眠っていた。
だから。
ついわたしは、少年に話しかけてしまったのだ。
「ここには、あんたのお母様は、いないわよ」
そう言うとわたしは、くるりと背を向けて立ち去ろうとした。
が。
誰かがスカートの裾を引っ張っていた。
振り向くと眠っていたはずの少年がぱっちりと目を開いてわたしを見上げていた。
わたしたちは、しばらく見つめあっていた。
わたしは、パニックになっていた。
これがバレたらエミリアおばあ様に叱られる!
「放して!」
わたしは、スカートを引っ張って少年の手を振りほどこうとした。
けど、少年は、その手を離そうとはしなかった。
「君は、森の妖精?」
少年は、わたしに訊ねた。
わたしは、冷たく答えた。
「そんなわけがないでしょ!」
「じゃあ、君が新しく来た若い魔女?」
「魔女じゃないわ」
わたしは、少年に告げた。
「わたしは、魔女見習いよ」
それが、わたしとオルトの出会いだった。
わたしは、まずいと思った。
必死に走って逃げた。
が、どうしても後ろが気になっていた。
オルトが木の根につまづいて泣き出したのをみて、わたしは、ため息をついた。
見捨てられない。
そうしてわたしは、オルトを家へと連れ帰った。
見知らぬ少年を連れ帰ったわたしをエミリアおばあ様は決して責めることはなかった。
エミリアおばあ様は、オルトに食事を与えると森の外へと送り出した。
それ以来、わたしとオルトは、幼馴染みになった。
少年は、歩き疲れたころに置かれている食料や飲み物に不信感を隠さなかった。
だけど、飢えには勝てない。
懸命に食べて、満腹になるとそのまま木にもたれて眠ってしまった。
わたしは、足音を忍ばせてその少年のそばへと近づいていった。
少年は、目だったところもない普通の男の子だった。
わたしは、眠っている少年をしばらく観察すると気が済んでその場から離れようとした。
そのとき、だ。
「かあさま」
少年が寝言で呟いた言葉は、わたしの心をとらえた。
うん。
どんな夢をみているのか。
少年は、泣きながら眠っていた。
だから。
ついわたしは、少年に話しかけてしまったのだ。
「ここには、あんたのお母様は、いないわよ」
そう言うとわたしは、くるりと背を向けて立ち去ろうとした。
が。
誰かがスカートの裾を引っ張っていた。
振り向くと眠っていたはずの少年がぱっちりと目を開いてわたしを見上げていた。
わたしたちは、しばらく見つめあっていた。
わたしは、パニックになっていた。
これがバレたらエミリアおばあ様に叱られる!
「放して!」
わたしは、スカートを引っ張って少年の手を振りほどこうとした。
けど、少年は、その手を離そうとはしなかった。
「君は、森の妖精?」
少年は、わたしに訊ねた。
わたしは、冷たく答えた。
「そんなわけがないでしょ!」
「じゃあ、君が新しく来た若い魔女?」
「魔女じゃないわ」
わたしは、少年に告げた。
「わたしは、魔女見習いよ」
それが、わたしとオルトの出会いだった。
わたしは、まずいと思った。
必死に走って逃げた。
が、どうしても後ろが気になっていた。
オルトが木の根につまづいて泣き出したのをみて、わたしは、ため息をついた。
見捨てられない。
そうしてわたしは、オルトを家へと連れ帰った。
見知らぬ少年を連れ帰ったわたしをエミリアおばあ様は決して責めることはなかった。
エミリアおばあ様は、オルトに食事を与えると森の外へと送り出した。
それ以来、わたしとオルトは、幼馴染みになった。
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