1 / 105
0 プロローグ
0ー1 幽霊
しおりを挟む
0ー1 幽霊
わたし、アリシア・ラキシスが前世の記憶を思い出したのは8歳のころのことだった。
その日、わたしは、死んだのだ。
凍てつくような暗い冬の湖の中で。
『まずやらなくては、後悔はできない』
わたしの幼馴染みであるオルト、オルトリッジ・オールドダークは、かつてわたしにそう言った。
まったくその通りだ。
そして、人は、やらかしてしまってから盛大に後悔するのだ。
その小雪の舞う日、オルトをスケート遊びに誘ったのは、わたしだった。
わたしの祖母の住む森の近くにはスケート遊びにちょうどいい小さな湖があった。
スケート遊びというのは、わたしが考案した遊びだ。
今思えば、これも前世持ちだったからなのかもしれないが、わたしは、なかなかの遊びの天才だったのだ。
オルトとわたしは、森の外に住んでいるきこりのジェイドおじさんに作ってもらった木製のスケートを持って湖へと向かった。
まだ冬は浅く湖の氷は薄いので、あまり湖の真ん中へいってはいけないとエミリアおばあ様は言った。
わたしは、しっかりと頷いた。
なのに。
わたしは、ついうっかりと氷の薄いところへと近づいてしまった。
それは、幽霊のせいだった。
氷の薄くなっている辺りに幽霊がいるのが見えたのだ。
この頃まだわたしは、この幽霊というものに馴染めてはいなかった。
幽霊というのは、エミリアおばあ様がいうには精霊と呼ばれるものなのらしい。
普通は、人は精霊が見えたりはしない。
「いいかい?アリシア。私たち魔女は、精霊が見えるし話もできる。だけど、このことを他の人間に知られてはいけないよ。これは、太古からの魔女と精霊の取り決めだからね。もしこの取り決めを破れば悪い精霊につれていかれてしまうよ」
エミリアおばあ様いわく、幽霊には二種類のものがいるらしい。
一つは、よい幽霊で人の役にたとうとしてくれる。
だけど、もう一つの幽霊は、人を闇に引き込もうとする悪い幽霊だった。
だけど、まだ幼かったわたしには、そんなことは理解できなかった。
だから、湖の真ん中にたっているその幽霊に話しかけてしまったのだ。
だって、その幽霊は、とっても美しかったから。
幽霊は、長い銀の髪をしたこの世のものならざる美しい少女の姿をしていたのだ。
「なんでこんなところにいるの?」
「さみしくて」
少女は、その蒼い瞳でわたしをとらえた。
「あなた、私とお友だちになってくれる?」
まずい、と思ったときにはもう遅かった。
わたしは、すでに、その少女の瞳にとらえられてしまっていた。
わたし、アリシア・ラキシスが前世の記憶を思い出したのは8歳のころのことだった。
その日、わたしは、死んだのだ。
凍てつくような暗い冬の湖の中で。
『まずやらなくては、後悔はできない』
わたしの幼馴染みであるオルト、オルトリッジ・オールドダークは、かつてわたしにそう言った。
まったくその通りだ。
そして、人は、やらかしてしまってから盛大に後悔するのだ。
その小雪の舞う日、オルトをスケート遊びに誘ったのは、わたしだった。
わたしの祖母の住む森の近くにはスケート遊びにちょうどいい小さな湖があった。
スケート遊びというのは、わたしが考案した遊びだ。
今思えば、これも前世持ちだったからなのかもしれないが、わたしは、なかなかの遊びの天才だったのだ。
オルトとわたしは、森の外に住んでいるきこりのジェイドおじさんに作ってもらった木製のスケートを持って湖へと向かった。
まだ冬は浅く湖の氷は薄いので、あまり湖の真ん中へいってはいけないとエミリアおばあ様は言った。
わたしは、しっかりと頷いた。
なのに。
わたしは、ついうっかりと氷の薄いところへと近づいてしまった。
それは、幽霊のせいだった。
氷の薄くなっている辺りに幽霊がいるのが見えたのだ。
この頃まだわたしは、この幽霊というものに馴染めてはいなかった。
幽霊というのは、エミリアおばあ様がいうには精霊と呼ばれるものなのらしい。
普通は、人は精霊が見えたりはしない。
「いいかい?アリシア。私たち魔女は、精霊が見えるし話もできる。だけど、このことを他の人間に知られてはいけないよ。これは、太古からの魔女と精霊の取り決めだからね。もしこの取り決めを破れば悪い精霊につれていかれてしまうよ」
エミリアおばあ様いわく、幽霊には二種類のものがいるらしい。
一つは、よい幽霊で人の役にたとうとしてくれる。
だけど、もう一つの幽霊は、人を闇に引き込もうとする悪い幽霊だった。
だけど、まだ幼かったわたしには、そんなことは理解できなかった。
だから、湖の真ん中にたっているその幽霊に話しかけてしまったのだ。
だって、その幽霊は、とっても美しかったから。
幽霊は、長い銀の髪をしたこの世のものならざる美しい少女の姿をしていたのだ。
「なんでこんなところにいるの?」
「さみしくて」
少女は、その蒼い瞳でわたしをとらえた。
「あなた、私とお友だちになってくれる?」
まずい、と思ったときにはもう遅かった。
わたしは、すでに、その少女の瞳にとらえられてしまっていた。
34
お気に入りに追加
268
あなたにおすすめの小説
護国の鳥
凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!!
サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。
周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。
首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。
同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。
外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。
ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。
校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!
アメイジング・ナイト ―王女と騎士の35日―
碧井夢夏
ファンタジー
たったひとりの王位継承者として毎日見合いの日々を送る第一王女のレナは、人気小説で読んだ主人公に憧れ、モデルになった外国人騎士を護衛に雇うことを決める。
騎士は、黒い髪にグレーがかった瞳を持つ東洋人の血を引く能力者で、小説とは違い金の亡者だった。
主従関係、身分の差、特殊能力など、ファンタジー要素有。舞台は中世~近代ヨーロッパがモデルのオリジナル。話が進むにつれて恋愛濃度が上がります。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
死神は世界を回る ~異世界の裁判官~
アンジェロ岩井
ファンタジー
魔界と人界とが合流を行うようになり、早くも百年の月日が経った。
その間に魔界から魔物や魔族が人界に現れて悪事を行うようになり、それらの事件を抑えるために魔界から魔界執行官が派遣されるようになった。同時に魔界で悪事を行う人間を執行するために人界執行官も制定された。
三代目の魔界執行官に任命されたのはコクラン・ネロスと呼ばれる男だった。
二代目の人界執行官に任命されたのはルイス・ペンシルバニアという男だった。
どこか寡黙なコクランに対し、明るく無邪気なルイスという対照的なコンビであったが、コクランにはある秘密が隠されていた……。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~神様がくれたのはとんでもないものでした!?〜
鶯埜 餡
恋愛
私、ミコはかつて日本でひたすら巫女として他人のための幸せを祈ってきた。
だから、今世ではひっそりと暮らしたかった。なのに、こちらの世界に生をくれた神様はなぜか『とんでもないもの』をプレゼントしてくれたようだった。
でも、あれれ? 周りには発覚してない?
それじゃあ、ゆっくり生きましょうか……――って、なんか早速イケメンさんにバレそうになってるんですけど!?
華都のローズマリー
みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。
新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる