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9 されど愛しき日々

9ー9 プロポーズ

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 9ー9 プロポーズ

 アンリは、しばらく俺とカークを2人きりにしてくれた。
 久しぶりに会うカークは、なんだか日に焼けて、体も大きくなっているようだった。
 俺は、カークに抱かれたままその胸に頬を埋めていた。がすぐにはっと気がついて体を離そうとする。
 「どうしたんだ?ルシウス」
 「だって、カークには、婚約者、が」
 俺が言うとカークがふぅっとため息をついた。
 「確かに俺は、メアリ嬢と婚約した。けど、すぐに婚約破棄されたんだよ」
 はい?
 呆然としている俺にカークは、あれからのことを話してくれた。
 「お前を身請けすることができなかった俺は、辺境伯家を捨てた」
 家を捨て旅に出たカークは、流れ着いた南方の小国家で騎士団に入った。そして、騎士団で働きながら俺を身請けするために金を貯めていた。
 「家を出るときに渡された手切れ金をあわせてやっとお前を身請けできる金額が貯まったころ、お前からの手紙を受け取った」
 カークは、急いでエイダース王国を目指した。
 俺を身請けするために。
 そして、たった今、到着したのだという。
 カークは、ベッド脇に跪くと俺の手をとった。
 「どうか、俺の伴侶になって欲しい。俺は、お前の他の客と違って金もないし、地位もそんな高くはない。騎士団といっても小さな国の話だ。お前に楽はさせてやれないかもしれない。それでもよければ、俺と結婚してくれないか?」
 「カーク・・」
 俺は、嬉しくて。
 頬を暖かい涙が伝っていく。
 俺は、カークに答えた。
 「もちろん。喜んで」
 部屋の外でがたっと大きな音がしたと思ったら、シャルとスミルナ様が入ってきた。彼らの後ろから気まずそうな顔をしたカルゼも入ってくる。
 「おめでとう、2人とも」
 シャルが複雑げな笑みを浮かべる。
 「結局、最後に美味しいところを持っていかれたな」
 「今度こそ、ルシウスが幸せになることを祈っている」
 スミルナ様が涙ぐんでいる横でカルゼが、真剣な表情で俺に言う。
 「辛ければいつでも俺のところにくるがいい。俺は、いつまでも待っている」
 
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